プロローグ
初投稿です!
素人ですが、どうぞよろしくお願い致します。
カタカタカタカタカタカタカタカタ
パソコンのキーボードを叩く音とマウスのクリック音だけが部屋の中に響いている。
俺、神凪悠はふと、キーボードが照らされて明るくなってきていることに気付いた。
「んっ?」
カーテンの隙間から朝日が差し込んでいることに気付き、時計を見る。
「げっ、もう5時過ぎなのか」
どうやら集中し過ぎていつのまにか徹夜をしていたらしい。
いや、だがしかし今すぐ寝れば2時間は睡眠を取ることができる……
「できるけど……今寝たら2時間後に起きれる自身がまったくないな。作業の切りも悪いし」
普段ならまだしもここ最近はほとんど夜に寝れてないから今寝たら誰かに起こしてもらわない限り絶対に起きることはできないだろう。
うちの妹に頼んでも絶対起こさないだろうし……
「しゃーないな、徹夜決定」
こうなってしまった以上仕方がない。素直に諦めて時間ギリギリまで作業してから学校に行く準備をすることにしよう。
「よーし! なんとか終わったな」
なんとか作業を終わらせることが出来たことに安堵する。時計を見ると現在時刻は6時40分。
ちょうどいい時間に終わらせることができた。
パソコンの電源を落とし、着替えを持って部屋を出る。
シャワーを浴び、制服に着替え、キッチンに向かう。
「さて、さっさと弁当と朝飯の仕度をしますか」
エプロンをつけ、冷蔵庫から弁当の材料を取り出し調理していく。
下ごしらえは昨日の夜にある程度していたので、すぐに二人分の弁当が出来上がる。
次は、昨日の夜に浸しておいた食パンを取り出し、フライパンにバターを引き、焼いていく。
焼いている間に皿を出し、ナイフとフォークを用意しておく。
1枚目が完成したので、すぐさま2枚目を焼き始める。
「よし、完成っと」
2枚目も焼きあがったので皿に載せてテーブルの上に並べる。
さてと朝飯も作り終わったし、それじゃあうちの妹様を起こしに行くとしますか。
コンコン
部屋のドアを数回ノックしてから声を掛ける。
「おーい、祈ー、起きてるかー」
「ん……起きてる」
ドアの向こうから思いのほか早く返事が返ってきたことに少し驚く。
どうやらもう起きていたらしい。
「そうか、朝飯もう出来てるから早く来いよ」
「わかった。すぐ行く」
そう言いつつ部屋の中で何やら動いている。
すぐに来るだろうと考え、キッチンに戻る。
祈を待ちながらフライパンを洗っていると、ドアの開く音が聞こえる。どうやら部屋から出てきたらしい。
「兄さん、おはよう」
「おう、おはっ……」
思わず言葉を止め、そっと目をそらす
「ん? どうしたの?」
「なあ、妹よ、下を見てくれないか」
「下?」
祈が目線を下げ、下を見る。
少し考えてから、
「……昨日、掃除した?」
「いや、確かに掃除したよ。床ピカピカだよ。でも他に気付くことはないのか」
再び問いかけるが本気でわかってないのか、それともとぼけているのか祈は首を傾げている。
「お前なんでズボン穿いてないの」
「…………………………………………ああー」
「いや、ああーじゃないから、なんでズボン穿いてないのにそんなに自然体でいられるんだ」
目をそらす前に見えた祈の姿は体にジャージの上だけを身に着けた、いわゆる裸ジャージと呼ばれるものだった。
幸い、ジャージの前を閉じていたのでセーフだと思いたい。……何がセーフなのかはわからないが。
「そういえば昨日寝ていて脱いだような……」
「……なあ、まさかと思うけどパンツは穿いてるよな?」
一瞬しか見てないが、裸ジャージはパンツを穿いてるのか穿いてないのかがわからない。
それ故の問い掛けだったのだが、
「確かめて見る?」
返ってきたのはそんな予想外な答えだった。
振り返ると祈がこちらを上目遣いで見つめていた。
少し頬を赤く染めているのが何とも可愛らしくて思わず抱きしめそうに……って、
「こら、兄さんをからかうなよ」
「ばれた、実はちゃんと穿いてる」
「まったく、早くズボン穿いてこい」
「わかった」
祈が部屋に戻り、思わず息をつく。
普段は無表情なのにああいう時に表情を変えるのはずるいと思う。
フライパンを洗い終えると同時に祈が戻ってくる。今度はちゃんとズボンを穿いていたのでほっとする。
「飲み物どうする?」
「牛乳」
「了解。ちょっと待ってな」
祈のマグカップに牛乳を注ぎ、自分のにはコーヒーを注ぐ。
眠気覚ましになるといいが正直気休めだろうな……
「今日はフレンチトースト?」
「ああ、昨日の夜から用意してたんだ」
「おいしそう」
「ああ、うまく出来たとおもうぞ。はいよ」
「んっ、ありがと」
既にイスに座っている祈にマグカップを渡し、自分も席に着く。
「じゃあ、いただきます」
「んっ、いただきます」
二人で手を合わせてから食べ始める。
うん、うまいな。
「美味しい」
「そうか、そりゃ良かった」
「兄さん、また腕を上げた。これならいつでも嫁に行ける」
「せめて婿にしてくれよ……」
まあ、うまそうに食べてるし今回は見逃そう。
「それで、今日は一日家にいるんだろ?」
「ん、撮り溜めてたアニメを消化する予定」
「そうか、面白かったら俺にも教えてくれ」
「わかった」
「あと、弁当作って置いてあるから昼になったら食べてくれ」
「兄さん、愛してる」
「はいはい、俺も愛してるぞー」
俺の妹である神凪祈は現在14歳の中学三年生である。
しかしながら、我が妹は絶賛不登校中でもある。
別にいじめられたとか何か特別な理由があるわけではない。
前に聞いたら学校には友達も何人かいるらしい。
ならなんで学校に行かないのか昔聞いてみたところ、
『あまり行く意味を感じない』
という言葉が返ってきた。
普通なら「ふざけるな!」と言うところだが祈は不登校になった時点で高校卒業に必要な学力を持っていたので、中学で受ける授業を退屈に感じてしまうのは仕方ないのかもしれない。
祈は世間から見れば天才や神童と言われる人種なのであろう。
俺にとっては可愛い妹だが。
本人曰く、
『ただ記憶力が良いだけ』
らしいが、なんにせよそれなりに勉強しないとテストで点が取れない俺としては羨ましい限りである。
ちなみに、不登校ではあるがまったく学校に行ってないわけではなく、テストを受けに行ったり、友達に会いに行くためだったりで登校することはあるらしい。
つまり、平日の月曜日に祈が一日中アニメ鑑賞をしていられるのはそういうことだ。
「ごちそうさま」
「ああ、お粗末様でした」
話をしながら食べていたのにあっという間に祈は食べ終わってしまった。
どうやら今回の味付けはかなり気に入ってくれたらしい。
また、作ってやろう。
「俺は食べ終わったら、食器を片付けて学校に行くけど何か帰りに買ってくる物あるか?」
「兄さん、生徒会で遅くなるって言ってた」
「そうなんだけど買い出しでスーパー寄ってから帰ってくるからな。今日は夜、菜乃花さん来るし」
菜乃花さん普段はコンビニ弁当ばっかりだから、ここでご飯を食べるときに栄養のあるもの沢山食べさせないと。
最近は特に覚えることが多くて疲れてるって言ってたし。
「わかった。ならプリン買ってきて」
「了解」
プリンは菜乃花さんの大好物だ。祈なりに最近お疲れの菜乃花さんに気を使っているのだろう。
「帰って来たら格ゲーで対戦」
「いいぞ、久々に3人でやるか」
「最近見つけた嵌め技の実験台」
「……俺はいいけど菜乃花さんには勘弁してやれよ」
気を使ってるんだよな?
「部屋に戻る」
「わかった」
「いってらっしゃい」
「ああ、行ってきます」
祈が部屋に戻る。
さて、俺も早く仕度しないとな。
結論からいえば結局、この小さな約束が果たされることはなかった。
初日なので後2話投稿する予定です。
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