憂鬱な体育祭
体育祭。
まじで出たくない。
だがもう俺がリレーのアンカーで出ることは決定事項。
アンカーとか絶対無理だ。
普通、野球部とかサッカー部とかの人が出るべきじゃないのか。
委員長なのに何言ったってみんな聞いてくれないし。
神崎さんともあんまり話せてないし。
はぁ、あんまりいいことないな。
そういや、最近アイリスが明るくなった気がする。感情表現豊かというかなんというか。
まあそれより今は今日の体育祭をどう乗り切るか。これが肝心だ。
アイリスと話して気でも紛らわそうと思った。
「アイリス。今日の体育祭うまくいくと思う?」
「今の琥珀様の身体能力を分析し、同年代の方と比べたところアンカーで勝てる確率は2%です。」
知ってはいたけどいざ数字を叩きつけられるとショックというか。2%って低すぎないか。
「せめて、俺のことを応援してくれる子がいたらなぁ」
「私は琥珀様のことを応援していますよ。2%という数字も決して低いわけではありません。」
「アイリスが応援してくれるのも嬉しいんだけど、やっぱこう女の子の黄色い声援が欲しいんだよね」
「同年代の女の子が琥珀様のこと応援する確率はほぼ0に近いです。」
その確率は分析しなくてもよかった…。
「まあ、アイリスが俺のこと琥珀って呼んでくれたらやる気くらいでるかもね」
「それはできません。申し訳ありません。」
最初に一回琥珀って呼んでくれたくせに。
様ってやっぱ距離感じるよな。
はぁ、体育祭やっぱり嫌だな。
.
.
.
そんなこんなで学校に着くと神崎さんに会えた。
体育祭だから少しメイクしてきてるのか。
「お、おはよう神崎さん」
「あ、委員長。おはようございます。今日の体育祭頑張ってくださいね。」
俺がアンカーと知ってからかっているのだろう。
こういう周りの目も正直きつい。吐きそうだ。
過度な期待感、、。いや誰も俺に期待なんかしていないに決まってる。
やはり黄色い声援は期待しすぎだったか。
目が回る。意識が飛びそうだ。
——様…!琥珀様!!大丈夫ですか?ご体調が悪いのですか?今日は帰りましょう——
「あぁ…アイリス。大丈夫だ。少しふらついただけだよ。今日は帰るわけにはいかない」
アイリスの声で気がつくと神崎さんはいなくなっていた。少し助かったかな。
俺だって帰れるもんなら帰りたいけど委員長としての手前、帰るわけにはいかない。
それに受けた仕事は最後までやり抜くのが俺だ。
そんな時、俺を呼ぶ声がした。
「よー琥珀〜見に来てやったぞ体育祭!」
「和也!来るとは言ってたけどこんな早くから来る必要あるか?」
「琥珀くんのかっこいいアンカー姿、ばっちりと特等席で見ないとな」
和也は笑いながらそう言った。
和也が見にきてくれた分、頑張らないとという気持ちと応援してくれる人がいるっていう気持ちで少し楽にはなった。
「えっと、アイリスちゃんだっけ?学校じゃ携帯は使えないんだろ?俺が預かっといてやるよ」
「あぁ頼むわ。アイリス。和也と一緒にいろよ。また終わったら話そう」
——かしこまりました。和也様、よろしくお願いします——
アイリスも和也に預けたし、あとは俺が頑張るだけ。
ついに憂鬱な体育祭が始まる。