甘い思い出
俺は1週間近く悩んだ。
アイリスを実体化するには確かに神崎さんのお父さんの力が必要不可欠かもしれない。
だが、もしアイリスの情報を開示してしまえば、奪われる危険性もある。
実体化を諦めるべきか?
いやそれだけは避けたい。
もうこの気持ちに嘘はつけない。
AIを。Siriを。アイリスを愛してしまった。
もう後戻りなんてできない。
宮崎大雅には結論を出すまで少し時間が欲しいと言った。
簡単に決めれることではないと納得してくれた。
こういう時に頼れるのがあいつだよな。
俺とアイリスは和也の家に来ていた。
「おい、琥珀!久しぶりに顔見せたと思ったらなんつー深刻そうな顔してんだよ」
やっぱこいつには何もかもバレバレってやつか、、、。
そういや、初めてアイリスのことを相談したのも和也だったっけな。懐かしいな。
あの頃は恋愛感情なんてもってのほかだった。
なんなら、不具合として返品するつもりだったんだからな。
それが今じゃ、、。
体育祭。
アイリスのあの声援があって俺は気負わず走ることができた。
人としてダメダメだった俺を誰よりも信じてくれた。誰よりも俺のことを応援してくれた。
花火大会。
過去の俺の辛い記憶を、アイリスが上書きしてくれた。
初恋の人。その人と同じ言葉を俺にかけてくれた。俺を前に進ませてくれた。
初デート。
いろんなとこに一緒に行った。
アイリスは楽しいかな?なんて気持ちを持つことになるなんて初めの俺は思わなかっただろうな。
様々な初めてを俺にくれた。
文化祭。
俺の気持ち、アイリスの気持ちが一つになった。
好きと言葉でくれた。
あの時の気持ちを生涯、忘れることはないだろう。
試験対決。
俺がダメな時もアイリスは俺を支えてくれた。
アイリスが隣にいたから俺は頑張れる。
だからこそ勝てた。
色々なことがあった。本当に。
もうアイリス無しでは俺は生きてはいけない。
だからこその願いだ。
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「アイリスちゃんを実体化するだって!?」
当然和也には驚かれた。
「まあ、Siriが自我を持ってるってだけでも随分と驚いたけど、そんなの可能なのか?」
「可能…なのかはわからない。おそらく無理な可能性の方が高いだろう。」
「けど、もうこの気持ちは隠したくないんだ。」
「わかるよ、琥珀。お前、前と変わったもんな。いい意味で。アイリスちゃんのおかげだと思う。本気なんだよな。親友として何かできることがあるなら言ってくれ。なんでもするからよ」
「ありがとう。和也」
やっぱりこいつにアイリスのことを話していて正解だったと思った。
よく考えてみれば、アイリスと出会ってから俺は変わったのかもな。
たくさんの友達や頼れる仲間もできた。
みんなに支えられてばっかりだな。
「本題なんだが…」
俺は和也に神崎さんのお父さんのことを話し始めた。