愛と決意の再確認
本気だからといって別に今までとやることは変わらない。
授業をしっかり受け、帰ってアイリスと話しながら勉強をする。これだけだ。
だがしかし、あいつを完膚なきまでに倒すにはそこからの努力も必要だろう。
アイリスとは話していたいし、寝る時間を少し削るか…。
——頑張ってほしいとは言ったものの、無理はいけませんよ——
「少しは無理しないとな、あいつに勝てないだろうし」
——それで琥珀君の体調が崩れれば元も子もないですから……——
アイリスをこけにされたんだ。
アイリスも言ってたようにここで黙ってるようじゃ、俺はアイリスの彼氏として相応しくない。
気合いを入れろ、一ノ瀬琥珀。試験までもう1ヶ月もないんだ。
しかし、アイリスの予感は的中した。
俺は無理をしすぎたせいか、週末に体調を崩した。
熱もあるし、咳もひどい。
疲労から来る風邪か…。
——今日は勉強はお休みです。しっかり寝て体調を良くしてください——
アイリスはとても不安そうな声でそう言った。
ダメだな、俺は。アイリスにまで心配をかけて。
頑張るって決めたはずのこともちょっと無理したらこれだよ。
"少し気持ち悪いな"
あの言葉が脳裏によぎる。だめだ。ここで無理をしなくていつ無理をする。
「ごめん、アイリス。今日だけは君のお願い聞けそうにないや」
——え、琥珀……——
俺は携帯の電源を落とした。
当たり前だがアイリスはあくまでSiriなので、電源を落とすと出て来れない。
きっと俺を心配して勉強もさせてくれない。
こうでもしないと俺は君に釣り合わない。
今回は頑張らないと、どうにかしないと。
俺は体調が悪い中、そこから何時間も机に向かった。
明日の朝にはアイリスに謝ろう。
.
.
.
そうして朝になった。
俺の体調は回復していた。
なんて言おうか考えながら俺は携帯の電源を入れた。
「アイリス、昨日はごめん。でも頑張りたくて」
——琥珀君……。たまには頼って……。——
その一言で自分が昨日したことを後悔した。
シンプルなアイリスの悲しいという感情が、いつもの硬く親しみにくい敬語を無意識に消していた。
自分への嫌悪感と、アイリスへの愛おしさが混じり合って複雑な感情が生まれる。
「頑張り方、間違えてたみたいだな。一緒に頑張ってくれって言ったら笑うか?」
——笑いますね。私は彼女なんですから。当たり前のことですよ——
あぁ。やっぱり俺はアイリスが好きだ。
だからこそ………。
「好きだよ、アイリス」
——はい。私もです——




