禁じられた恋—アイリス—
私がこの気持ちに気づき始めたのは琥珀様と初デートをした時。
2人でいる時間、琥珀様の横顔、話し声、全てが私の心を満たした。
でも。私はAI。ただ、琥珀様のために作られたもの。決して2人は交わらない。
だから、私のこの気持ちは琥珀様には伝えない。
何も気づかれず終わる。それが最善と分かっているから。
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琥珀様には最近お友達ができた。
あの根暗だった琥珀様と比べると素晴らしい進歩だ。
最初は私も少し警戒をしていた。
琥珀様の優しさを利用するような人なら私が琥珀様を守らなければならない。
しかし、この人は何か違うようだった。
琥珀様のことを良く理解している。
この人なら、琥珀様のそばにいても大丈夫だ。
この人と関わるごとに琥珀様の心境の良い変化が見られる。
文化祭の準備も楽しそうだ。
本当は私も参加したいけれど、そうもいかない。
やはり私はAI。学校の人にバレるわけにはいかない。
でも、でも。私も琥珀様のそばにいたい。
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ダメだ。
私のプログラムに欠陥が生じている。
私の想いを琥珀様に伝えたい。もうその気持ちに踏ん切りがつかなくなっている。
人間の恋というものが私に干渉している。
たとえそれで琥珀様といられなくなったとしても。
AIとしては失格だけど、私も人になりたい。
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琥珀様に時間を作っていただいた。
琥珀様は文化祭の様子を屋上から見ているようだ。
言うならもう、ここしかない。
緊張していつもの声を出せない。
震える声で伝えられるだろうか。
私はAI。ううん。アイリス。
琥珀様に頂いた名前。
琥珀様と出会った日。
かっこいいところを見せてくれた体育祭。
2人で観に行った花火。
初めてのデート。
全てが私を作ってくれた。全てが私に楽しさを教えてくれた。
この感謝とともに。私の気持ちを。
——琥珀、好き——