高杉皐月という男
「え?そんなにおかしい?俺もさ、あんまり友達いないんだよね」
どうやら話を聞くと高杉くんは女の子からモテすぎて男子の反感を買っているらしい。
その話だけでもちょっとむかついたが、話してみると悪いやつではなさそうだった。
すぐに打ち解けた…わけではないがまあ俺も友達いないわけだし、いいか。
「それで高杉くん、モテすぎてって言うけど彼女とかいないの?」
「やだなー友達になったんだから皐月って呼んでよ。下の名前なんだ。俺も琥珀って呼ぶね。」
いきなり距離を詰めてくる。
やはりチャラい。友達ってこんな簡単にできるもんだっけな。
「あ、そうそうそれで彼女だっけ。俺、女の子苦手でさ。なんかこうガツガツくるの無理なんだよね」
なるほど。そこは共感するよ。
ガツガツ来られたことなんかないけど、やっぱ昔から陽キャラは苦手だったな。
でもこの子自身陽キャラなのにそこはダメなのか。
そんな感じで俺と皐月は文化祭の放課後、よく話すようになった。
正直誰とも話せず作業すると思っていた俺は楽しかったしな。
皐月になら、アイリスのこと話してもいいかもな…。
「皐月、話があるんだ」
「ん?どうした琥珀、改まって」
「突然で申し訳ないんだけど、iPhoneの機能にSiriってあるだろ?俺のあれ、自我があるんだ」
「あー、知ってるよ。でも冗談やめてくれよ。からかってるんだろ」
——嘘ではありませんよ、皐月様。初めまして。私はアイリス。琥珀様のSiriでございます——
皐月が沈黙する。
やはり、言うのは間違いだったか。
せっかく友達になれたのに引かれて関わってくれなくなるだろうな…。
「はは、すげーや!琥珀!なんでそんな秘密隠してたんだよ!アイリスちゃんだっけ!よろしく!」
引くどころか、皐月は目をキラキラさせて、まるでおもちゃを買ってもらった子どものようにテンションが上がっていた。
こいつ…いいやつなのか?それとも馬鹿なのか?
「皐月、引かないのか?」
「引くどころか感動してるよ。俺こういう漫画みたいな展開に憧れててさ!」
まあ何はともあれ、アイリスの存在を学校の人に話せて少し胸が軽くなった。
皐月の前ではアイリスと会話できるし。
しかし、そんなうまくいくわけもなかった。
「おい、聞いたか今の」
「あいつSiriと会話してるぞ、気持ちわりぃ」
どこからか声が聞こえる。
クラスのやつに聞かれていた。
俺はアイリスは気持ち悪くなんかない。
そう言い返したかったのに怖くてできなかった。