儚くて、綺麗で、力強い
花火大会当日。
俺とアイリスは和也との集合場所に向かった。
——浮かない顔ですね、琥珀様。どうしましたか?——
「いや、なんでもないよ。それよりアイリス、初めての花火だけどドキドキしてるか?」
今さら花火が嫌いなんて言えないし、あの日の思い出も消すために来てるんだ。
アイリスと和也のために今日は楽しく過ごそう。
——そうですね。楽しみではあります。それよりも琥珀様とどこかに出かけるというのが嬉しいですよ——
相変わらずアイリスは俺の欲しい時に欲しい言葉をかけてくれるやつだな。
そんなたわいもない会話をしながら俺らは集合場所に到着した。
「よう琥珀!相変わらずここの花火大会はすげえ人だな」
「確かにすごい人だな。小学6年のとき来たきりだけど全然衰えてないよ」
あの頃となにも変わらない人だかり。
そう、あの初恋の日と、、。
「腹減ったし、屋台でも回りながら花火までの時間潰すか」
今日は楽しもう。そう決めたんだ。
俺がつまんない顔をしていたらアイリスも和也もつまんないもんな。
俺らはいろんな場所で写真を撮った。
みんなで思い出を残せるように。
でもこの人だかりの中で実はあの人は生きてて
ここに来ているんじゃないか。
そんな夢みたいな妄想が頭を離れない。
「琥珀くん、、」
あの人の声が聞こえた気がした。
俺は辺りを探した。しかしいるはずもなかった。
「おい琥珀、どうした?今日調子悪かったのか?飲みものでも買ってくるからアイリスちゃんとここにいろよ」
「あぁごめん。悪いけど頼むわ」
和也に心配をかけてしまった。
いい加減切り替えろ。
そんなことを考えてる時に花火が上がり始めた。
あの花火の音とあの人が重なる。
あの人に言われた言葉が俺の中に蘇る。
あの日、あの人と花火を見た場所だ。
忘れてた、アイリスにも見せてやらないと。
そう思い、携帯を空に掲げた。
——これが花火…——
「あぁ綺麗だろ。儚くて、綺麗で、力強くて」
——美しいです。まるで琥珀様の真っ直ぐで澄んだ瞳のように——
その瞬間、アイリスと愛さんが重なった。
愛さんの生まれ変わりがアイリスなんじゃないか。そんなことも思った。
涙が止まらなかった。でも、俺はあの日より強くなれている気がする。
そこに和也も戻ってきた。
みんなで花火を楽しんだ。あの日のことを忘れるほどに。
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花火大会が終わり家に着いた。
俺はみんなで撮った写真を見返していた。
一枚だけ見覚えのない写真がカメラロールにあった。
花火を見ながら泣く、俺の顔。
アイリスが撮ってくれたのか、、。
あいつにも心配かけたな。
でも、俺は前に進めた気がした。
真っ直ぐで澄んだ瞳…。俺は大事に出来ていますか。
儚くて、綺麗で、力強い。
俺はそんな花火が好きだ。