法則その7 プラス思考は大事
「ぎゃあああああ!! ペートルスさんがあぁぁ!!」
これで2人目の犠牲者か。
かつては英雄とたたえられながら、落ちぶれた挙句にあっさりと化け物に殺されてしまうとはな。
まったく哀れな運命だぜ。
相変わらずグロテスクなシーンだが、俺は冷静だった。
しかしここで大人しすぎるのも違和感になる。
わずかな違和感でも死亡フラグにつながりかねない状況なのだ。
そこで俺は切羽詰まった表情でクライヴの両肩をつかんだ。
「落ち着けぇ! 落ち着くんだ、クライヴ!!」
「あ、ああ。そうだった……。とにかく落ち着かないといけないな。ありがとう。イルッカさん」
「礼にはおよばねえよ。それよりもこれからどうする?」
あくまで主人公を立てて、主導権を彼に握らせる。
間違っても俺が彼を引っ張る立場になったらダメだ。
こういったシーンでは、頼れるリーダータイプほど死亡フラグが立ちやすいからな。
あくまで『冴えないモブ男』に徹する。
そうすれば死亡フラグが立つことはない。
こんなシチュエーションでも死亡フラグさえ立てなければ、絶対に死なないから焦らなくても大丈夫だ。
そのように俺は自分に言い聞かせたところで、クライヴが口を開いた。
「そうだな……。アルメーヌの無事を確認するのが先決だと思う」
「なるほど。そうするためにはどうするんだ?」
「この暗がりの中では二人で探すのは難しいし、やみくもに前に進めば化け物の餌食になりかねない。ここはいったん戻って仲間たちと合流しよう」
「分かった。そうしよう」
さすがは主人公。状況判断に優れてるな。
あとは無駄口をたたかずに彼のそばにいるだけだ。
恐怖に涙を流し、びくびくと震えながら進んでいくクライヴ。
一方の俺は彼を励ます振りをしながら、次のことに頭を巡らせていたのだった。
………
……
「アルメーヌちゃん!!」
「ナタリア!! 一人で行っちゃダメだ!!」
「いやぁあああ!! 離して!! 化け物がいる中にアルメーヌちゃんが一人で取り残されてるのよ!!」
ナタリアのやつ、ずいぶんと取り乱しているな。
もしここでクライヴの制止を振り切って洞窟の中に一人で入れば、その時点で死亡フラグが彼女の頭上にはためく。
ただし彼女はアニメのヒロインポジだから、そう簡単に死亡フラグは立たない。
しかし俺は知っている。
この女は腹黒くてエロい。
今だって取り乱しているが、それは単なる振りで、本音はクライヴとスキンシップが取りたいだけに違いない。
設定資料集によれば、かつてイルッカの妹の友達の彼氏を寝取ったこともあったらしい。そして別れた男に詐欺で訴えられて囚人となった経歴を持っている。男にとっても女にとっても敵というわけだ。
誰も彼女の素性を知らないのを逆手にとって、熱血な美女を演じているが、腹の中では何を考えているのやら。
「みんなでアルメーヌを助けに行くんだ!」
クライヴが高らかと告げる。
誰も反対せずに、俺たちは洞窟の中へと入ったのだった。
………
……
難なく先ほどの広場に出た。
足元に転がるじいさんの亡骸にみなが言葉を失っている中、クライヴが言った。
「ここからは二手に分かれてアルメーヌを探そう!」
これもアニメの通りだ。
主人公と同じチームになった奴らは全員生き延びて、違うチームの奴らは一人を除いて全員殺されてしまうことになるんだよな。
どちらのチームになるかは完全に運頼みだが、こういう時はプラス思考でいたほうがいいってミカが言ってたからな。
俺なら大丈夫。俺なら大丈夫。俺なら大丈夫。
お、なんだかいける気がしてきた。
絶対に俺はクライヴと同じチームになれるはずだ。
「僕のチームと、イルッカのチームの二つに分かれよう!」
は?
まじか……。





