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法則その6 主人公の正しい利用方法

◇◇


――ねえ、お兄ちゃん! 知ってる? 死亡フラグが立っていなかった人が突然殺されることがあるんだけど、たいていは『巻き込まれて死ぬ』なんだよ!


………

……


「ふん! 何が化け物じゃ! わしはそんなもんを信じないぞ!」


「がはは! どうした化け物! 怖気づいたかぁ!? いつでもかかってこい! この龍殺しが相手してしんぜよう! がはは!」


 ペートルスじいさんは相変わらず『死亡フラグ』をいくつも立てまくっている。

 そんなに死に急がなくてもいいのに、とは思うが、他人のことばかりに気を取られている場合ではない。

 俺は俺でいつ死亡フラグが立ってもおかしくないのだから。

 さて、そんなことを考えているうちに、ちょっとした広場に出てきた。


「真っ暗だからまったく見渡せないな」


 クライヴが不安そうにつぶやいた。

 アニメの通りならばそろそろだな。

 とその時。

 

「キャアアアア!」


 アルメーヌの叫び声が響きわたったのだ。

 直後にクライヴの焦った声が聞こえてきた。

 

「アルメーヌ!!? どこだ? どこへ行った!?」


 やはり予想通りだ。

 アルメーヌが失踪した。

 リアルタイムで見ていた時は、化け物に彼女が連れていかれたと思い愕然としてしまったのを覚えている。

 そんな当時の俺を鼻で笑ってやりたい。

 言うまでもなく叫び声は演技で、彼女は物陰に身を隠しただけだからだ。

 暗くて視界がきかないし、広場は姿をくらますにはうってつけの場所ってことか。

 そして彼女は『道案内の少女』から『人殺しのヴァンパイア』へとチェンジするわけだ。

 いよいよペートルスじいさんの死が間近に迫ってきたが、俺もピンチに陥るのは間違いない。

 

「わしのそばを離れるんじゃないぞ!!」


 じいさん、むしろその逆だ。

 彼からなるべく離れること、それが生存のカギなのだ。

 アルメーヌはわざと攻撃範囲の広い一撃を繰り出してくるはずだ。

 もし俺がじいさんの言葉通りに隣に立っていようものなら、彼女は容赦なく俺を巻き込んでくる。

 そうしてこう言うんだ。

 

――あ、手がすべっちゃった。てへ。


 手がすべって人を殺しちゃったなんて理屈は通用するはずもないが、ここはアニメの世界だ。

 じゅうぶんにありえる。というより、絶対にそうなるに決まっている。

 つまりこのシーンでは、『死亡フラグを立てた人のそばにいるだけで死亡フラグが立つ』という理不尽な仕様になっているのだ。

 

 ではどれくらい離れればいいのか。

 実はすごく単純なのだ。

 

「クライヴ。一緒にいてくれ」


「ん? イルッカさん? ど、どうしたんですか? 僕の背中に隠れちゃって」


「どこから襲われるか分からないだろ。だからこうして一緒にいて欲しいんだよ」


「え、あ、はい……」


 これが答え。

 すなわち『主人公のそばにピタリとくっつく』である。

 

「がはは! イルッカは臆病者じゃのう!」


 ふん! なんとでも言え。

 むしろ臆病者のレッテルを貼ってくれればラッキーだ。

 ピンチになれば理由なく主人公の背中にくっつくことができるからな。

 そしてポイントは死亡フラグがたっているペートルスと俺との間に、主人公のクライヴを挟むことだ。

 つまり、

 

『死亡フラグが立った人 → 主人公 → 俺』


 の順番で並ぶ。こうすれば主人公だけを器用にかわして攻撃をすることは難しい。

 そもそも死亡フラグを立てることすらできないに違いない。

 

 暗闇の中でアルメーヌが歯ぎしりしながら悔しがっているのが頭に浮かんできた。

 ははは! ざまぁみろ! ここでも俺の勝ちだ!

 当然そんな風に大笑いすることはできず、俺はただただクライヴの背中で震えていた。

 

 そして、

 

――ヒュン……。


 という乾いた音が聞こえてきた瞬間に、ペートルスの頭部がずり落ちた。

 鋭利な鎌で彼の首を斬りつけたのだろう。

 もし彼の近くにいたら今頃俺の首とじいさんの首は仲良く地面に転がっていたはずだ。

 

――ドサッ……。


 胴体だけになったペートルスの体が崩れ落ちた瞬間。

 

「ぎゃあああああ!!」


 ようやく事態を理解したクライヴの悲鳴が洞窟を震わせたのだった。


 


ホラー映画では「主人公=チートの防具」ということですね。

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