おまけSS① CM中のできごと
2020年10月7日に本作の続編として、書籍で第2巻が発売されます!
そちらを記念して、店舗特典だったSSのうち、2作品を公開したいと思います!
――ねえ、お兄ちゃん。CMが終わると場面が変わってる時ってあるじゃん。カットされたシーンって何が起こってるのかな?
『キーピング・ザ・デッド』を観ている時に、ミカが何気なく問いかけてきた。
俺は「さあ、想像もつかないな」といった記憶がある。
まさかその答え合わせを自分で体験することになろうとは――。
◇◇
今残っているメンバーは、アルメーヌ、クライヴ、ナタリア、ボブ、アルヴァン、モーナ、エドワルド、そして俺、イルッカの8人。
アニメでは黒い森を抜けたところでCMに入り、それがあけると、川べりの広場で休憩するシーンに移ったはずだ。つまり森から川べりまでの道のりはカットされたわけだが、現実ではそうはいかない。
その間、ボブがくだらないジョークを飛ばしたり、エドワルドが胡散臭い自慢話を延々としたり、クライヴがとってつけたように大げさな相槌をうったり……。
退屈だが平和な時間が流れた。
だがそれは、とある話題でもろくも崩れ去ることになる――。
「なあなあ、ところでお前たちは、どんな女が好みなんだ?」
突然、ボブが爆弾を放り投げたのだ。
ピクリと眉を動かしたのは女性陣だった。
薄幸の美少女(を演じている)アルメーヌ。
スタイル抜群のナタリア。
スマートで仕事のできるモーナ。
三人とも「私が一番モテるに違いない」と思い込んでいるんだろうな。
興味ないことを装うようなすまし顔だが、耳だけは男性陣の方へ向けている。
「……俺はそういうのは興味ない」
空気を読まず、ばっさりと切り捨てるアルヴァン。
俺もこういう下世話な話題にはまったく興味がないので、ここで話が切れてくれればいいと思っていたが、そう易々とはいかなかった。
「ぎゃはは! 知ってるんだぜ? お前さんにその昔、女がいたことを」
「え? そうなの?」
モーナが食らいつく。その様子からして彼女がアルヴァンに好意を寄せているのは明らかだ。アルヴァンはふいっと顔を横に向けた。
「……昔の話だ。哀れな女でな。貧しくて学校もいかせてもらえず、俺がいないと何もできない女だった。俺はそういうのに弱い」
「そ、そうなんだ……」
自分一人で何でもできて、男をグイグイとリードしていくモーナとは正反対の女性がアルヴァンの好みか。
モーナのやつ、顔面蒼白で目が泳いでいるぞ。
その一方でナタリアとアルメーヌは、クスクスと笑いを漏らしている。
「俺は外見よりも心が綺麗な人がいいな!」
ボブが大声で言ったが、女性陣は誰も何も反応しなかった。
次にエドワルドの爺さんが口を開く。
「わしは年上の女性が好みだのう。少なくとも10は年が離れていた方がよいわ。ははは!」
予想通りだが、女性陣はまったくの無反応だ。
さて次は……。全員の視線が俺に集まる。
そりゃそうか。主人公を差し置いて、俺がトリをつとめるわけにもいかないしな。
よほどひねくれた回答をしなければ、死亡フラグが立つこともないだろう。ならばこれまでの鬱憤をちょっとだけ晴らさせてもらおう。
俺はアルメーヌに視線をやりながらいった。
「俺は年下で、綺麗というよりは可愛い感じの女性が好みだ」
「へ、へえ。そ、そうなの」
アルメーヌが明らかに動揺しているのは、自分のことを言われていると思ってるからだろう。だがそれでいい。本番はこれからだからな。
「ああ、でも、表向きは幸薄い美少女を演じながら、裏では平気な顔して人間を殺すような化け物だけは勘弁だな」
「なっ……」
アルメーヌの顔が大きくゆがむ。俺は誰にもさとられないように、にやりと口角をあげた。
さあ、堰は切った。あとは流れに任せるだけだ。
「ぎゃははは! そんなクズみたいな女、誰でも嫌に決まってるわ!」
「そうじゃ。そんな危ない女がいたらわしが脳を手術してやるわい」
「私が正義の名のもとでさばきます!」
「……俺の銃で処刑してやる」
まさかアルメーヌのことを指しているとも知らずに、みんなが罵声を口にする。
それを彼女は頬を引きつらせながら聞いていた。
とても良い光景だが、ほどほどにしないと彼女が暴走したら大変なことになる。
そこで俺はクライヴに話を振った。
「ところでお前さんはどんな女が好みなんだ?」
次の瞬間、アルメーヌとナタリアの二人がギロリと目を光らせた。
――私のような女に決まってるわ!
口に出さずとも同じセリフを心の中で発しているのは火を見るよりも明らかだ。
二人は互いに目を見合わせ、火花を散らしはじめた。
これは面白いことになった――。
クライヴの回答によっては、場が大荒れになるのは間違いない。
もしかしたらナタリアかクライヴに『死亡フラグ』が立つかもしれない。
ミカよ。これが答えだ!
CM中でもアニメの世界ではすごいことが起こっている!
俺はゾクゾクしながらその場を黙って見守った。
しかし俺はアニメの主人公というものを、しっかり理解できていなかったらしい。
ひと呼吸おいたクライヴはためらうことなくこう言い切ったのだ。
「僕は『笑顔』が素敵な女性が好きだ」
と……。
「はっ?」
思わず声が漏れる。
あまりに綺麗すぎる答えに、全員が言葉を失った。
しばらくした後、ナタリアの乾いた笑い声が響いた。
「ははは! さすがクライヴだわ!」
精いっぱいの笑顔を作る彼女に対し、負けじとアルメーヌも笑った。
「あははは! わ、私も、え、笑顔が素敵な、お、お、男の人がしゅき」
おいおい、無理して笑うからかみまくってるぞー。
その後もナタリアとアルメーヌは、ボブのくだらないジョークやエドワルドの胡散臭い自慢話にも、まるで外国のコメディ番組の観客のようにわざとらしく大笑いした。
おかげで場の空気はなごやかになったわけだが、その様子を満足そうにドヤ顔で見守るクライヴの横顔が鬱陶しい。
これでよく分かった。
CMでカットしている部分を知っても、ろくなことにはならない、と……。
お読みいただきありがとうございました!
第2巻は舞台をアニメからゲームに移して、イルッカこと翔太とアルメーヌが『死にゲー』の世界で、全滅フラグを立てないように奮闘する物語です。
詳細は下記よりご覧ください!
どうぞよろしくお願いいたします!!





