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法則その25 『陰謀』に巻き込まれた人は死亡フラグなしで殺される

………

……


 俺は自分の考えが正しいことを裏付けるために、ミカと一緒に観たアニメのクライマックスを思い起こした。

 

――監獄塔に立てこもった4人にアルメーヌが襲いかかった。彼らは『アルメーヌ』の手によって、次々と殺された。そしてついに生き残りはクライヴだけになった。


 このシーンを見た時に、俺たちはちょっとした違和感を感じていたのは確かだ。

 それは、


『3人が殺されたシーンがよく見えなかった』

『最後の三人は死亡フラグすら見えなかった』


 というもので、疾走感のあるシーンの演出の一つだとばかり思っていたんだ。

 

 しかし、実際は違っていたとしたら……。

 つまり、

 

『死亡フラグが見えなかったのではなく、死亡フラグが立っていなかった』

『3人が殺されたシーンがよく見えなかったのは、何者かの犯行を巧みに隠すためだった』

 

 としたならばどうか。

 思い出されるのはミカの言葉だ。

 

――死亡フラグが立ってないのに殺されちゃう人もいるの! でもそれって、たいていは『陰謀』に巻き込まれた人なんだよ。


 そう……。

 つまりアルヴァン、ボブ、ナタリアが殺されたのは『陰謀』だった。

 

――陰謀は悪いヤツが隠れてコソコソやってるってこと!


 死亡フラグの立っていない彼らに手を下す『悪いヤツ』の正体は……。



 主人公、クライヴだ。

 

 つまり、あのクライマックスの真相はこうだったのだ。

 

 

――監獄塔に立てこもった4人にアルメーヌが襲いかかった。彼らは『クライヴ』の手によって、次々と殺された。そしてついに生き残りはクライヴだけになった。



………

……


 思い返せば最初に殺されたディートハルトと俺は、こんな会話をかわしていた。



――なあディートハルト。お前さんは仲間の中に化け物がいるって、『誰か』に吹き込まれたんじゃねえだろうな?


――えっ!? なんで分かったんだ!?


――……やっぱりそうだったか……。分かった。じゃあ、明日の早朝にそいつを連れてこい。そしたら信じてやる。


――……ああ、分かった。そうしよう。



 この時の『誰か』とは、てっきりアルメーヌ自身のことだと思っていた。

 しかし実際はクライヴだったに違いない。

 つまり彼は最初からアルメーヌとつながっており、彼女を利用してディートハルトを殺した。

 そうして彼は『白い洞窟』に着く前に、ナタリアへアルメーヌの正体を明かした。

 『白い洞窟』でメンバーを二つに分けたのは、彼女とアルメーヌを組ませて、洞窟内でメンバーたちを死へ追いやるため。

 さらに自分のいないところで犯行が起これば、自分に疑いの目が向けられる心配はないからな。


 実に狡猾なヤツだ。

 

 そして彼には『絶対に生かしておきたい者たち』がいた。

 彼らを自分のそばに置くことで、死亡フラグを立てさせないようにしていたのだ。

 それはここにいる2人。さらに真相を話した相手……。

 

 アルヴァン、ボブ、ナタリアの3人だ。


 では、なぜクライヴは彼らを最後まで生かしておき、自分の手で殺すのか。

 そこまでは分からない。

 しかし一つだけはっきりしたのは、

 

『今ここで警戒すべき相手はアルメーヌではなくクライヴだ』


 ということだ。


 

「これからどうするよ?」


 ボブがみんなを見渡しながら問いかけた。

 当然彼らの視線はリーダーのクライヴに集まっていく。

 

 まずいぞ。

 

 このままアニメと同じ展開になれば、クライヴの思うつぼだ。

 あまり目立ちたくないが仕方ない。

 俺はクライヴの背後から声をあげた。

 

「その前に確認しておきたいことがある」


 メンバーたちの視線が集まったところで、俺は続けた。

 

「みんなの『武器』を確認させてほしい。いざとなった時の戦い方を考えるうえで大事なことだからな」


 こういうシチュエーションは『元剣闘士』という肩書が役に立つ。

 実際には、クライヴがあのシーンでどうやってメンバーたちを死へ追いやったのか確認しておきたいだけだ。

 そして俺は自分から答えた。

 

「ちなみに俺は、この弓だ」


「……俺は銃」


「私は短剣よ」


「俺は小型のハンマーだ」


 アルヴァン、ナタリア、ボブの順で答えが出てくる。

 そしてついにお目当てのクライヴの番だ。

 彼は腰に取り付けた小型のポーチから、数本の細いナイフを取り出したのだった。

 

「僕は『投げナイフ』。刃に猛毒が塗ってあるから、たとえクマでもかすり傷を負わせただけで、数秒で倒せる。でも化け物には通用しないよね……」


 なるほど。

 主人公にしては地味すぎるが、油断した仲間たちを一撃で殺すにはベストな武器だ。

 同時に彼に目をつけられたら、死を回避するのが不可能であることも理解できた。

 自分の欲望のためなら確実に邪魔者を排除するクライヴを前にすれば、死亡フラグを立てた相手しか殺さないアルメーヌが可愛く思えるから不思議なものだ。

 

「……俺、イルッカ、クライヴの三人で足止めする。隙をついてナタリアとボブが突撃……。そんなところか?」


 アルヴァンがぼそりと言った。

 正直、戦い方なんてどうでもいい。

 だが全員の視線が俺に集中しているから、何か答えないわけにはいかない。


「あ、ああ。そうだな」


 生返事でごまかして、その場をやり過ごした。

 さて、これ以上の余計なおしゃべりはできなさそうだ。

 これまでは『死亡フラグ』を回避することが目的だったが、今回は『殺人鬼』からの回避が目的。

 だからミカの助けは借りられない。

 自分の選択を信じるしかない。

 では、俺の取れる選択肢はなにか。

 

(1)戦う

(2)逃げる

(3)死ぬ

 

 実にシンプルなものばかりだな。

 だがもう腹をくくるしかない。


 ここが最後の大勝負。

 ミカ……。

 画面の向こうで、ちゃんと目を見開いて見ていてくれよ。


 俺がお前との約束を守るところを――。


 

 

 


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