表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/4

第1話 始まりは突然に

私の名前は菅野桜楽。


お父さんは公務員、お母さんは専業主婦。


至って普通の17歳。


名前の由来は大好きなお婆ちゃんの裏山の山桜が満開になった頃に生まれたから…だけど私はその桜を見たことがない。


何故なら私は生まれた頃から目が見えないからだ。


先天盲という病気らしいけど運命じゃあしょうがないね。


だけどね。


外国のお医者さんが手術をしてくれることになったんだ!


もしかしたら目が見えるようになるかもしれない!


明日の朝早い便でアメリカに飛ぶんだって!


最初に見る景色はお婆ちゃんの家の桜がいいなと思って、お婆ちゃんに頼んで苗木を鉢に入れて、アメリカに持っていくんだ。


手術が終わって、見えるようになるまで時間がかかるみたい。


見えるようになった頃に花が咲くんだって!


今からでも楽しみだよ!


じゃあ明日に備えて早く寝ます!


おやすみなさい。


20××年3月××日 サクラ。




この日記を書いた次の日、私の乗った飛行機は太平洋に墜落した。




意識を取り戻すといつもと変わらない真っ暗な世界だった。


何故か暑くも寒くもない……まるで温度を感じていないようだ。


声がよく響く、頭の中でよく響く。


「あの誰かいませんか?」


虚空に声が響く。


「お母さん!お父さん!」


誰も返事はしない。


這いつくばって辺りを探索すると触りなれたものがあった。


白杖。盲目のサクラにとっては命の次に大切なものだ。


「よかったぁ杖はある…」


杖を軸に立ち上がり、辺りをコツンコツンと散策する。


10mほど歩くと壁にぶつかった。


壁伝いに歩いていくとこの場所は四角い部屋のようになっている。


その後も散策を続けると倒れていたであろう場所の近くでコツンという感触。


「うわ!何だろう?」


恐る恐る触ってみるとこれもまた知ってる感触。


桜の苗木を植えているポットであった。


「ここどこなんだろう…」


少し疲れて座り込み、ポットを抱きしめて、不安に駆られる。


「あの時…飛行機が傾いて、それで…救命胴衣を付けて…お母さんに抱きしめられて…」


思い出せるだけの記憶を思い出す。


身体の傷は触るかぎり全くない。


「お母さん…」



「いやーごめんごめん待たせたかな?」


虚空から成長期前の少年の声が響く。


「ひゃっ!誰ですか!?」


サクラはズリズリ地面するように後ろに下がる。


そうするとお尻に何かが当たった。


「おいおい。そんな驚くことないだろうよ。てか僕こっちだよ」


サクラは驚きのあまりポットを離して、逆方向に慌てて下がる。


「おっと…危ないなぁ」


声の主は放り出されたポットをキャッチすると地面に置いた。


「あなたは誰ですか?」


「僕かい?僕はねー。パト!異世界への案内人を神様から任せられてるんだ」


異世界の案内人を名乗る少年と思われる声がサクラに近寄ってくる。


「ねえ!ここはどこなんですか!?お父さんとお母さんは?私目が見えないんです…だから教えてもらえませんか?」


「あーなるほどなるほどぉ君目が見えないんだね。だからか僕のこの神々しい姿を見ても驚かないのは…」


「質問に答えてください!」


「おっと悪い悪い。そんな怒らないでくれよ。安心してよ。君の両親は無事さ」


「はぁ本当ですか…よかったぁ」


サクラは胸をなでおろした。


「あぁ君の両親は無事さ…そう君の両親はね」


「それってどういう事ですか?両親は?」


「そうさ。あの日君達が乗った飛行機は謎の機体トラブルで太平洋に沈んだ」


「えっ…やっぱり落ちちゃったんですね…でもどうして私は生きてるんですか?」


「あはは。忘れてしまったのかい?君は死んでいるよ。あの事故で…まあ正確には契約によって死んでしまったと言ってもいいだろう」


「契約?契約って何ですか?」


「はぁ覚えてないとは面倒だな…いいかい?君は僕と契約したんだ。目の見えない私の命をあげるからみんなを助けてってね」


「うっ……」


サクラの頭の中に記憶の断片が走り回る。




「お父さん!お母さん!嫌だ!嫌だ!起きてよ!水が入ってきてるよ!」


着水に成功したもののその時の音と衝撃によって機体は破損。


四方から水が機内に流れてきていた。


サクラは水が流れ込む音で状況を知った。


サクラ以外の乗客は全員着水のショックで気絶している。


サクラは救命胴衣と母の胸がクッションになり、辛うじて意識を保っていた。


「誰か!誰か!誰か来てよ!みんなを助けてください!」


「はぁ何だい何だい僕が折角の休日を異世界の海に漂うことで満喫してたっていのに邪魔してくれちゃって…この世界の人間は高度な技術を持ってる割には一人じゃなんにもできないから困ったもんだよ」


飛行機の壁からすり抜けるように中に入ってきたものの姿は見えずとも誰かが来てくれた。


「あっ!あの!助けてください!みんなを助けてください!」


「へ?なになに?僕に助けてって?えーどうしよっかなぁ。なんか僕にくれるの君?」


「お願いします!このままだとみんな死んじゃう!あなたも死んじゃいますよ!」


「あはは僕は死なないよ。だてに人外やってないぜ」


「人外?なんでもいいです!みんなを助けてください!」


「だーかーらー何かちょうだいよ。見返りは大事だろ?」


「みんなを助けてくれたら私はあなたの言うことを何でも聞きます!」


「何でも?じゃあ命をちょうだいよ!今ちょうどさ異世界の案内人の初仕事の相手を探してたんだよねー」


「い……命……」


「やっぱり自分の命は大事だよねー死にたくはないか…まあそうだよねー」


「私のこのちっぽけな命でいいならどうぞ…」


「は?本当にいいのかい?両親はともかくとしてもその他は他人なんだぜ?両親だけならそうだなその綺麗な黒銀髪でもいいんだぜでもいいんだぜ?」


「いえ…私さっき見ちゃったんです。この便には私よりもまだまだ未来のある子供たちが乗ってる。私の命でその子達の未来を守れるなら!」


「とんだお人好しだな…そんなんじゃ異世界に行っても苦労するぜ全く…よーし!分かった乗客共は任せてとけ、ちょっくら助けてくるから先に案内室で待っててくれよ。もしかしたら異世界渡りがまだあんまり上手くねぇから記憶、混濁すっかもだけど……」


そこからサクラの記憶はこの案内室で目覚めた時と繋がった。


「よお思い出したかい?それじゃ契約に従って、ちょっくら異世界に行ってもらうけどいいよな?答えは聞いてねぇぜ」


案内人パトはにんまりとイタズラ笑顔を作るのであった。


サクラには見えてませんが……ね。

新作です。


よければお読みください。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ