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夢はひとりみるものじゃない  作者: 小林汐希・菜須よつ葉
70/71

70話

 今、パパの部屋にはパパとお姉ちゃんとよつ葉の3人家族水入らずで過ごしている。


「まったく、無理しちゃって。よつ葉だけでもよかったのに。大変だったでしょ」

「ふた葉だって、県内の学校じゃないことでグチグチ言われてたんだろう? そういうのは単なる親のエゴでしかない」

「迷惑かけてたわね」

「気にする話じゃない。迷惑かけていたのはこっちの方だ。自分も新年度からよつ葉と同じ日に復帰することが決まった」

「よかった。でも最初から無理したらダメだからね。あ、でもよつ葉ってプロがいるかぁ」


 パパとお姉ちゃんが楽しそうに話している。よつ葉の合格発表だった夜は寄せ鍋だった。お姉ちゃんも家族で食卓を囲む楽しさを味わいたかったのだろう、この日はお姉ちゃんのリクエストで海鮮料理が並んでいる。


「よつ葉はいいわよねー、この間と今日で2回の豪華料理じゃない」

「パパを困らせるようなこと言ったらだめ」



 親権の話になって、少しまじめな話をパパから聞いた。お姉ちゃんが、その場の重い空気を変えた



「それはもう心配ないでしょ。よつ葉は看護師になったわけだし。それにグチグチといつまでも地元じゃないだの、親が望んだ進路じゃないだの言われているよりは、よっぽど精神的に楽ってもんよ」


 相変わらず……、いや教師になってますますズバッと物事を伝えてくるように感じた。


「まったく、よつ葉が引っ越しをするなんて、ずいぶん思い切ったことするなと思ったけど、この環境じゃぁね。あたしもこれまでよりは二人のことを心配しなくてもすむわけだし」

「あ、あのなぁ……」


 こう言っているときの姉は、大抵が安心しているとき。いつもよりも上機嫌に飲んでいる。


「ふた葉は明日には帰るんだろ? せっかくの時間なんだから邪魔は消えるとするか」


 パパは、そういって夕食の片づけをして、先に寝床に入るという。


「二人とも、何時まで起きていてもいいけど、明日の新幹線に二日酔いで乗るなんてことにはならないでくれよな?」

「おねえちゃんつぶれる前に切り上げるから大丈夫。パパおやすみなさい」


 パパが寝床に行ってしまったので、久しぶりに姉妹で飲んで話している。


「お姉ちゃんが病気のときは看護してあげるね」

「"新人"がとれて中堅看護師になったらね」

「信用ないなぁ……」

「あはは」


 パパがこの場にいないと言うことから、だんだん話は女子トークに変化していく。


「お姉ちゃん、彼氏は?」

「今はいない」

「今はって事は、彼氏いたの?」

「いたよ」


 女子お得意の恋愛トーク。


「えぇ~」

「よつ葉、うるさい」

「ごめんごめん」

「どんな人だったの?」

「おとなしい人だったな」

「あぁ」

「ちょっと、あぁってなに?」

「お姉ちゃんが相手だよ。色々と我慢してたんだろうね」

「ちょっと、どういう意味」

「素直な感想を……」

「失礼ねぇ。そういうよつ葉はどうなのよ」

「えっ?」

「人のこと聞いておいて逃げられないよ!」

「国家試験のことでいっぱいで、恋愛どころじゃなかったよ!」

「今からかぁ。医師の彼氏だな」

「なんで?」

「よつ葉、お持ち帰りされて気づいたら結婚しまーすって感じがする」

「それ、後輩にも言われた。医師に捕まっていそうって」

「でしょう!」


 女子会の夜は姉妹の遠慮ない話題で過ぎていく。


「ねぇ、よつ葉」

「なぁに?」

「パパ再婚とかしないのかなぁ?」

「そんな話、聞いたことないなぁ」

「パパにも幸せになってほしい」

「うん。その時が来たら祝福してあげよう」


 こんなことまで話していた。それからふたりで他愛もない話をしてお互い支え合うことを約束して久しぶりに姉妹で並んで眠った。

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