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夢はひとりみるものじゃない  作者: 小林汐希・菜須よつ葉
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66話

 結果発表からの帰り、スーパーに寄って買い物をしていこうとパパに提案された。


「え、冷蔵庫そんなに空だったっけ?」

「今日は特別だ。なんでも好きなもの食べさせてやるぞ」

「そんな……。好きなものだなんて、いきなり言われても……」


 パパは、よつ葉にそういい嬉しそうにかごを持ち楽しんでいる様子。いつもは最低限の食材をしかも、おつとめ品で購入して小分けにして冷凍保存していた。その中からできるメニューを考えていた。だから急に好きなもの食べさせてくれるといわれてもメニューに困る。そんなよつ葉の様子を読み取りパパが



「よし、それなら温まるように鍋にするか」

「うん!」


 メニューを提案してくれた。そこからのパパの行動は早かった。野菜類から始まって、焼き豆腐も忘れずに入れて、肉のコーナーでもテキパキと決めてかごに入れていた。


 買い物を終わらせ、ふたりで買い物袋を持って並んで家に帰る。


 帰ってきてパパは、戸棚の奥にしまってあった土鍋と卓上コンロを取り出す。そして具材を鍋の中に並べてコンロの火をつける。グツグツ煮たつ音がしてきて、その間に取り皿や飲み物を用意する。パパの手際よさに感動していた。


「よつ葉、もういいだろう」


 蓋を開けると、出汁が具材に行き渡っていて、その匂いだけでも食欲を十分に刺激してきた。


 パパはお薬を処方されているので、炭酸を開けてふたりで祝杯をあげた。


「おめでとう、よくここまで頑張ってきたな」

「ぱぱぁ……」

「ただ、これで終わりじゃないぞ? これからが本番だからな?」

「うん」

「とは言っても、そんなのは今日言う話じゃない。今日は腹一杯食べて飲んで、笑ってくれ」

「うん。よつ葉もお鍋はよくやったけど、いつも一人分だから、こんなに具だくさんなんて見たことない」


 父娘(おやこ)で、お鍋を囲んでいると


 「あれ?」

 後ろに置いてあったスマートフォンが鳴る。


「あれ、お姉ちゃんだ」

「ふた葉から?」


 スマホを手に取り通話をタップする。


「もしもし?」

「ちょっとよつ葉! この時間までなんの連絡もよこさないってどゆこと!?」

「え?」

「知ってんだからね、今日が結果発表だったんでしょ!? そのくらいの連絡よこしなさいよ!」


「へっ、パパ連絡した?」

「俺はよつ葉がしたもんだとてっきり……」


 その会話に、お姉ちゃんがさらにヒートアップしてした。


「ちょっと、なにふたりで隠してんのよ! どうせお祝いなんでしょ?!」


 イタズラ心が湧いて、スピーカーのモードに切り替えてみた。


「今日は、パパ特製のお鍋。温かいよぉ?」

「もー! そんなことだろうと思った! あたしのことだけ除け者にしてー!!」

「だって、お姉ちゃん、学校の用意する必要あるじゃない!?」

「まぁまぁ、ふた葉にもそのうち埋め合わせするから。春休みになったら遊びに来いよ」


「とりあえず、合格したのよね? それなら安心して寝れるわ。よく頑張ったね。おめでとう」

「お姉ちゃんも、ありがとう」


 通話後、パパと顔を見合わせると、お互い吹き出していた。


「とんだ竜巻が飛び込んできたな」

「おねえちゃん、次来たらきっといっぱい食べるよ?」

「覚悟だけはしておく……」


 ご飯を食べて、ふたりで片付けをして、いつも通り交代でお風呂に入り布団に入る。昨日からの緊張が一気にほどけて、どっと疲れが吹き出してくる。


「あー、おわったぁ…………」

「明日は学校に行ってくるんだろう?」

「うん、たぶん書類を書いたりしなきゃならないから」

「分かった。家の片付けをしておくから行っておいで。みんなと食べたりするようなら言ってくれれば大丈夫だから」

「どうだろうなぁ……」


 パパとそんな会話をしているとき、パパの声が子守唄のように眠りの世界に誘われて夢の世界に辿り着いていた。

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