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夢はひとりみるものじゃない  作者: 小林汐希・菜須よつ葉
61/71

61話

 よつ葉との事実上の同居が始まって2週間ほどが過ぎた。


 最初は同じ部屋で寝ることにも緊張していたことも、いまではすっかり馴染んでしまっている。


 もちろん、誤解に結び付いてしまうようなことはしていない。あくまで、小さかった頃と同じであり、その続きという関係だから、変な噂も立ちようもない。


 自分自身も、社会復帰に向けてのリハビリを始めているけれど、社会からこれだけ離れていたことに対する負目や、果たして本当にできるのかという不安も頭をもたげてくる。

 口に出しては言わないものの、そういったものは娘にすぐ分かってしまうものなのだろう。


お互いに「焦らない焦らない」がよつ葉との合言葉になっている。


 しかし、もうひとつの大きなイベントが目の前に迫っているのはどうしようもなかった。


「明日は特に持っていくものないんだろう? 受験票くらいか?」

「うん……」


 仕方ない。いくら自分が望み、家から追い出されるように独立し、奨学金での生活をしながらの勉強。先月の試験の結果発表が明日に控えている。


 試験直後の自己採点ではまず心配はないレベルだった。しかし、物事に絶対というのは存在しない。僅かにでも心配ごとがあれば、それを増長して悪い方に考えてしまうのが人間というものだ。


 合格発表については、直接会場に見にくもよし、インターネットで自分で見てもよし、学校に行って見てもよしとのこと。

 その方法はよつ葉自身に決めさせた。


 しばらく考えて選んだのは「直接見に行く」と。


 一番面倒な方法だけど、結果に対して一番自分でも納得がいくだろう。


「学校には行かなくていいのか?」

「結果見たら、合否を教授に電話すればいいことになってる。その日は特になにもすることないって聞いてるから」


 夕食の時、そんな会話をした。

 普段通りでいい。そう意識しながらも、どこか奥底では意識せざるを得ない焦燥感。


「明日、一緒についていってもいいか?」

「もちろん。一人じゃ怖くて見られないかもしれないし」

「そんなことはないだろうがなあ。でも、それだと第一声を考えておかなくちゃならないな」

「もし、番号がなかったらどうする? そっちの方も考えておいてよ?」

「そっちもか? 全然考えてない。一晩で思い付くかな?」


 まさかそんなことはないとは思うが……、一応考えなければならないのか?


 いや、そんなことは考える必要はないはずだ……。


 それよりも。明日の発表は午後2時。

 お昼はゆっくりしている場合じゃないだろうから、肝心なのは夕食だな。


 俺の頭のなかでは、明日の夕食……祝宴のメニューを何にするかが急ぎのミッションとして回り始めていた。


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