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夢はひとりみるものじゃない  作者: 小林汐希・菜須よつ葉
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59話

 最近ではすっかりお馴染みとなった、二人での夕食の時間を済ませ、別々ではもったいないと始めた入浴も済ませる。


 これまでは、そこである程度の時間を過ごしたあと、よつ葉を送り出すのが習慣だったのだけど、今日からは違ってくる。


 隣の部屋に戻っても寝具の用意がないからだ。


 夕方までに、掃除を済ませた部屋に最低限の生活用品を持ち込んだ。


「どうする? 部屋を別々にしても、同じ部屋で寝てもそれはよつ葉が決めていい」

「もちろん、一緒に寝る!」


 どうやらその質問の答えは最初から用意してあったらしい。


「じゃぁ、お布団持ってくる!」

「適当に用意頼むよ」


 部屋を分けるといっても、それは引き戸でしなかなったから、すぐに布団を並べて用意ができる。


 いつもに比べれば少し早いのだけど、あくびをしたのを見ると、もう休ませてやろうと部屋の戸締まりを始めた。


「こうやって寝るのはいつぶりだろうな?」

「わかんない。途中で数えるのをやめちゃった……」

「そうか……」


 ここまで来るには、ふた葉に聞いても並大抵の日々ではなかったというのは分かっている。


 いま、自分たちは二つの事柄について結果待ちになっているということ。


 ひとつ目はよつ葉の国家試験の結果だ。これは恐らく問題はないと思っている。これさえパスしてしまえば、あの母親がなんと言おうが、国が認めた資格を持つことになるのだから、名実ともに独立して堂々と生きていくことができる。


 もうひとつは自分たちの親権の問題になる。

 娘たち二人はすでに成人になっているのだから、そこまで悩む話ではないのかもしれない。それでもよつ葉にとってはあの「家」から引き離すことができるし、そのことで人生のリセットをかけてやることができるからだ。


 どちらも3月に結果と審判が出る。とにかく、今はそっとして落ち着いた生活をさせてやることが一番だ。


 普段は日が変わる頃まで起きているというよつ葉だが、この日は気がつけばすでに静かな寝息をたてていた。


 昨日の夜は睡眠というようなものではなかったと思うし、精神的なダメージも大きかったと思われるから、疲労が蓄積していたのだと思う。


 二十歳を過ぎた娘と同じ部屋で、布団を並べて寝ているというのが、世間的にはどう思われるかは人それぞれだ。


 この先、自分たちがどのように生活していくのか。


 もちろん、二人の娘たちが親元を巣だっていく日が来ないとも限らないし、むしろそれは自然にやって来てもおかしくはない。その時に自分の存在が決心の妨げになってはならない。


 でも、それは今すぐに差し迫っているものではないし、それよりも大切なものを預かっている身。

 ふた葉にも今回の騒ぎについては連絡をしてあって、本人が一番落ち着いて過ごせる環境を作ってやってくれと依頼されている。


 同時に自分の自立だって考えなくちゃならない。いつまでも娘たちに心配をかけ続けるわけにはいかない。


 横で落ち着いて休めているよつ葉とは反対に、俺の頭のなかは整理しようにもなかなか落ち着かないまま、時計の針は深夜帯に突入していた。

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