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夢はひとりみるものじゃない  作者: 小林汐希・菜須よつ葉
48/71

48話

 パパに見送られて病院を後にして、試験会場に向かう。周りにいる同世代の人達全てが同じところに行くんじゃないかと思えるほど心に余裕がないのだろうか?


 最寄り駅について会場に向かう。受付は紺野班みんなでしようと入り口で待ち合わせしていた。少し早すぎたかな? ここでスマホを取りだしパパに電話を入れる。


「どうだ? もうついたか?」

「うん、今はみんなの到着待ってるところ」


「そうか。これまでやれるだけのことはやってきた。今日も風邪をひいたわけでも、寝不足で行ったわけでもない。昨日までの問題のほうが難しいことをたくさんやってきたのだから、今日はサラサラっと、名前だけ書き忘れないようにして、気楽にやってきなさい」


 パパの話を聞いて、心を落ち着かせていたら紺野君の姿をみつけたので、またかけるねと言い通話を終わらせた。


「よつ葉、おはよう」

「おはよう。緊張するね」

「お前がその台詞を言うかぁ」

「紺野君が落ち着きすぎてるんだよ」

「小野じゃ、あるまいし」

「あはは、言うね~」

「間違いではないと思うぞ」

「まぁね、ふふっ、楽になった。ありがとう」

「4月から同じ病院で働くぞ」

「うん」


 そんなことを話していたら紺野班のメンバーがゾロゾロ集まり始めた。全員が揃う。


「受付行くぞ」


 紺野君が、みんなの顔を見渡しそう言った。


「うん」

「おう」

「うん」

「いよいよかぁ」

「決戦か」

「うん」

「おぉ~」


「小野、雄叫びはやめろ。迷惑だぞ!」

「俺?」

「お前の他に誰かいる?」

「スミマセンデシタ」

「…………」


 最後の最後まで班長に怒られる小野君。相変わらずの光景だった。


 全員が受付を済ませそれぞれの控え室へ向かう。よつ葉は前原君と同じ教室のようだ。控え室と試験教室は隣に準備されていた。教室で待つ人、控え室で不安と戦う人、過去問を解く人様々だった。よつ葉はあるサプライズをすることにした。


「どうした? なにか忘れ物でもしたか?」


 病室で落ち着かないでいるであろうパパに電話をかけた。


「いま、試験会場の隣の控室。ここなら何をしていてもいいって」

「そうか。いるだろ、周りで参考書を広げているようなやつが?」

「うんうん、いたいた」

「そんなことはもしなくていい。周りはみんな小野くんだ」

「さすがに、小野くんよりは頭良さそうな雰囲気の子が多いよ」

「そっか、それ、本人に言ってやれ」

「昼休みに言っておく!」


 やっぱりパパの声を聞くと安心する。


「パパ、試験の監督さん来た」

「おし、行って来い。受験番号と名前書き忘れるなよ?」

「うん! 行ってくるね」


 よつ葉たちの教室の受験者は雰囲気が何か違うものを感じる。注意事項は黒板に書かれていて目を通して終わり。そしてすぐに試験が始まった。午前中の2時間40分の戦いが始まった。必修問題の始まりだった。言葉は少し変わっているが聞かれていることは問題集で繰り返し勉強してきたことだからスラスラ解けていった。一通り最後まで解き終えて見直しに入る。なんとかできていると思う。こうして午前中の部が終わり、紺野班集まってお昼ご飯を食べる約束になっている。みんなそれぞれの試験教室から集まった。


 「俺、満点かも!」


 小野君が自信に満ちた表情で現れた。


「はいはい」


 相変わらずな対応な美羽ちゃん。


「時間なくなるぞ、飯食うぞ」


 紺野君の一言で、午後からの試験に向けての行動に移す。みんなで弁当を食べ始めた。よつ葉は、河西看護師長に作ってもらったお弁当を食べてちょっとエネルギーチャージをしにその場を少し離れた。



「午前中お疲れさん。疲れただろう」

「まだ午後残ってる。それでも、引っ掛かることなく解けたから、大丈夫だと思う」

「そうか、それならよかった」


 パパに連絡を入れた。きっと気にしているはずだから。


 パパの声を聞いて安心と元気をもらい、紺野班の元に戻る。


「いよいよ残り後半戦だな!」

「うん。いつも通り問題を解くだけだよ」

「いつも通りだと危ないのがいねーか?」

「あーぁ」

「あーぁ、って言いながら俺を見るなよ! しかもみんなして酷くね?」

「おのっちだもん、仕方ないじゃん」

「言わずにはいられないよね」

「ねぇねぇ、今って国試の真っ只中だよね?」

「そうだね」

「俺ららしくて良いんじゃない?」

「そっか、全力を尽くしていこう」


 こうして、それぞれの試験教室へ移動して看護師国家試験の泣いても笑っても最後の2時間40分の戦いが始まった。午前中同様、つまることなくスムーズに最後の問題まで解けた。終わりを告げる声がかかる。4年間の思いを全て出しきった瞬間だった。


「終わったな。ミスしてないよな?」


 紺野君の班員を甘やかさない一言が告げられる。


「もちろん」

「俺、満点!」

「全部解けた」

「一応全部書いた」

「たぶん、大丈夫」

「終わった~~」

「うん」


 紺野班の戦いは終わった。あとは結果を待つだけとなった。みんなそれぞれ連絡を入れていたので、よつ葉もパパに連絡を入れた。


「パパー、終わったよー」

「おぉ、お疲れさま。その声なら大丈夫だったようだな?」


 パパの声を聞いて、緊張していたのが解けた瞬間だった。


「うん、引っ掛かることはなかった」

「そうか。今日は疲れてるだろうからまっすぐ帰っていいからな。その声を聞けば結果は心配していない。明日も学校終わってからでいいからな」

「うん、明日は答え合わせしてから病院行くね」

「分かった、今夜はよく寝て休むんだぞ」


 パパとの通話を終えて紺野班の元へ戻りみんなで試験会場を後にした。

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