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夢はひとりみるものじゃない  作者: 小林汐希・菜須よつ葉
46/71

46話

 よつ葉たち紺野班メンバーの空気も変わった。

 さすがに、もう遊んでいる場合ではない。毎日ゼミでの模擬試験をやったあとは、パパの病室に寄って時間まで問題集を解いていく。そして、パパに確認しないといけないことを聞こうと思う。



「ねぇパパ……」

「なんだ?」

「あのね……、試験の日、ここから出発してもいいかな?」

「つまり、前日にここに泊まるってことだな?」


 パパは、何やら考え込んでいた様子だけど河西看護師長に確認すると言ってくれた。



 翌日学校にいたらパパからのメールで病室に泊まる許可が出たから明日の準備を万全にしてから来なさいとの事だった。


 早めに家に帰り試験の準備と病室に泊まる準備をして病院へ向かった。病室についてパパがよつ葉に声をかけた。


「今のうちに、明日どうしても忘れてはいけないものだけを揃えておいてくれ」

「うん」

「受験票と筆記用具。それだけあればいい。あとは会場の寒さとかに備えたものだけは用意しておくこと。変に重い参考書などは持っていくな。かえって不安材料になっちまう。ここまでにやることはやった。もう詰め込む必要はない」


 パパは、明日のことで色々と注意事項を話してくれる。



「いいかぁ、いつだったか言ってたな。周りは全部小野くんだ。それなら気が楽だろう。直前の最後の最後まで参考書を見ているやつもいるだろう。でも、逆効果だ。不安を煽るだけになってしまう。薄いのを一冊、お守りがわりに持っていく程度でいい。それも使わないに越したことはない」


 実習の時に、紺野君が言っていた。緊張するよつ葉に、周りは小野だと思え!って言っていた。


 いつものように夕食はパパが売店で準備をしてくれてきた。ふたりでたわいもない事をはなして時間を過ごした。


「疲れてるだろうから、ゆっくりおやすみ」

「うん……」


 やっぱり一人じゃなくて良かった。パパといる安心感からか、試験前の夜に眠ることができた。


 朝、ブラインドの外が少し明るんだ頃、病室のドアがノックされた。


「誰だろ……」


 そっと開けてみると、まだ私服の河西看護師長だった。


「これ、今日の朝ごはんとお弁当ね。さすがにどっちもコンビニで済ませなんて言えないから。なにも心配せずに行ってらっしゃい。見送りはお父様にお願いすればいいわね」


「看護師長……」


「4月1日に待ってるわよ。どこに配属になるのかしらねぇ……」


  そういって、手早くドアを閉めていった。


「借りを作っちゃったな。それは結果で返してやれ」


 パパの配膳まではまだ時間があるから、先に食べるようパパに言われて食事をすることに。


「今日は談話室にも行かない。ずっと部屋にいるから、何かあればいつでも連絡してきなさい」


 エレベーターでカギが開いたばかりの外来エントランスに向かう。幸いにして日曜日。ほとんど人はいない。


「神頼みは好きじゃないんだが、気休めだ。邪魔にならないなら自分の代わりに連れていってくれないか?」


 パパが小さいサイズのお守りを差し出した。


「これでずっと一緒にいられるね。いってきます」

「おう、いってこい」


 不安がない訳じゃないけど、パパにお守りをもらったし今まで頑張ってきたと言う気持ちもある。パパに見送られて、看護師国家試験会場に向かった。

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