44話
パパに教えてもらった事を守り、電車に乗るときは面倒でも一番後ろの車両の一番後ろに乗っている。車掌さんの見える位置に乗るようになった。それからは卑猥な行為は受けていない。
そんな時にまたまた事件が起きる。講座が終わり前原君と雑談しながら他のクラスの紺野班メンバーを待っているときにそれは起きた。
「ねえ、菜須さん」
同じクラスの専門学校生の男の子が声をかけてきた。
「はい」
「突然ごめんね」
「大丈夫です」
「菜須さんって彼氏いるの?」
何? いきなり彼氏いるのかなんて、別にどうでもいいことじゃないの?
「それが、何か君に関係あるの?」
前原君が、よつ葉の代わりに問いただす。
「彼氏がいないなら、僕と付き合ってほしくて」
「彼氏はいないけど、今はそんなことしている場合じゃないでしょ。国家試験が目前だよ」
「断られる理由は僕の就職先が市民病院で菜須さんが大学病院だからですか?」
「病院の大小は関係無いでしょ? そんなこと考えるような人とは付き合えないよ」
「ほら、やっぱり僕の行く病院の方が格下だからじゃん」
話が通じない子だなぁ。どうしよう?と思っていた頃、紺野班メンバーが集まってきた。
「なんかあったのか?」
「どうしたぁ?」
その声に、よつ葉に告白してきた男の子は逃げていきました。この事、パパが聞いたらどう思うのかなぁと心の中でイタズラ心が芽生えていた。
病室の扉を開けて中にはいる。最近は、よつ葉の表情で何かを感じとるパパ。
「どうした?」
「パパぁ…。よつ葉、告白された…」
「はぃ?」
何だかなんとも言えない表情でよつ葉を見つめたパパに、よつ葉は結論を話す。
「でもね、即お断りした」
「そうなんか?」
ホッとしたようなイライラしたような父親の顔をしていた。そしてよつ葉にパパは
「そんなの放っておけ。この試験まで1ヶ月を切ったこんな日程で、そんなことしか頭にないんじゃ、男としても正直そこが割れてる」
「間違ってないよね?」
「当たり前だ」
そんな話をして病室を後にした。次の日にその男の子は違う女の子に同じように告白をしている現場に遭遇してしまった。彼女も即お断りを入れていた。 そのためAクラスの女子の間では、ロンリー君というあだ名がついている。
告白魔と化したその子は、女の子の間で有名になった。まさか、三人目に告白をするとは思ってもいなかったがそのまさかが起きた。
クラスの女子に手当たり次第にアタックしていくのではないかということで、Aクラスの女子の間でロンリー君の情報共有をしていた。
パパにその事を話すと
「まぁ、世の中には恋愛すらしたことのない男子も増えているご時世だ。その彼には可哀相だが、いまはそれをしている時期じゃないってことを思い知ってもらうしかないな」
そう言っていた。そしてよつ葉の勉強の邪魔にならないようにとの配慮だと思う。そっと病室を出ていった。きっと談話室に向かったのだろう。
まさか談話室で大変な事が起きていたなんて知らずに「看護師国家試験過去問題集」と戦っていた。




