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夢はひとりみるものじゃない  作者: 小林汐希・菜須よつ葉
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4話


 今日は大学に実習記録を提出に行くため、実習はお休み。


……パパ、無理してないと良いんだけど。



「よつ葉、実習延長どう?」


 大学の正門前で前原君がよつ葉に声をかけた。


「あっ、おはよう。順調だよ」


「そっか。良かったな」


「前原君は?」


「卒論の誤字訂正の呼び出し」


「お疲れ様」


「おう、行くか?」


 通いなれた大学構内を進んでいく。看護学部棟につき二人で中に入り目的地に向かって進んでいく。


「終わったらいつものとこで待ち合わせな」


 そう言って教授の部屋へ入っていった。よつ葉も実習記録を提出に教授の部屋へ向かった。


 佐々木教授の教授室へ着きノックをする。


「どうぞ」


 中から声が聞こえ扉を開けて中へと入る。


「佐々木教授、おはようございます。実習記録の提出です確認お願いします」


「実習の延長申請して頑張ってるわね。余程、良い病院だったのかしら?」


「内定をいただいています」


「そう、頑張らなくちゃね」


 実習記録に目を通し始めた佐々木教授。やり直しなら図書館でやり直そう。そう思いドキドキしながら佐々木教授のひとことを待つ。


「よつ葉さん、内容は文句なしだけど指導看護師と病棟看護師長の印鑑が押されてないわ。再提出ね」


「えぇーー」


「こことここに印鑑もらってきてね」


「はい」


 佐々木教授の部屋を出て、前原君と約束をした看護学部棟一階の休憩スペースで来るのを待つ。


「よつ葉、ごめん待たせた?」


「大丈夫。でもさぁ、指導看護師と病棟看護師長の印鑑が押されてないのを指摘された。今から病院行かなきゃ」


「俺も一緒に行ってやるよ。印鑑もらったらあの中庭で昼飯にしない?」


「うん、付き合ってくれるの?」


「仕方ないからな」



○●○●○●○●



 病院に着きいつもの通いなれた病棟まで足を運ぶ。前原君も一緒に実習をしていた病棟なので一緒に中まで付き合ってくれる様子。紺野班メンバーなら自然なことなので何も気にしないでいつも通りに病棟に足を踏み入れた。


「今日は実習ちゃん、居ないわね」


「そうね、よつ葉ちゃんの姿が見えないわね。どうしたのかしらね」


 舞花さんと舞花さんのお見舞いにいらしていたK様が談話室で賑やかに話をしていらっしゃる。


「あの二人、賑やかだな」


 前原君が笑顔で微笑ましく見てつぶやいた。


「仲良しだよね」


「土田と小野みたいだな」


「あはは……だねぇ」


 談話室を通り過ぎようとしたら、


「あっ、よつ葉ちゃんじゃないの!」


 舞花さんに声をかけられ二人で談話室に入る。


「こんにちは。体調はどうですか?」


 前原君が声をかけた。


「あらぁ、イケメン尚君も一緒なの? もしかして……付き合ってるの?」


 舞花さんが瞳をキラキラさせながら前原君に質問して私たちを見つめる。


「違いますよ。手のかかる班員なんですよ、今日も「実習記録」に印鑑もらい忘れて教授に指摘されて印鑑もらいに来たんです」


 前原君が、よつ葉のミスをばらしてしまう。


「あらぁ、優しいのね。手のかかる彼女ほど可愛いって事かしらね」


「4年間一緒に頑張ってきた仲間ですから。就職先も同じだしいつものことですよ」


 前原君と舞花さんの会話は続く中、談話室を見渡すと窓際でパパがいつものように外を眺めていた。この場を離れて窓際に向かった。


「小林さま、体調はどうですか?」


「変わりないよ。こうして食後の休憩もいつも通りだよ」


「無理していないか心配だったから」


「書類に不備があったのか?」


 汐希パパは、前原君が舞花さんに話していたことをしっかりと聞いていたらしい。


「実習記録に指導看護師さんと病棟看護師長さんの印鑑が押してなかったの」


「許してもらえるのも学生だからと甘えていてはダメだぞ」


「甘えては無いけど」


「社会に出たら言い訳は通用しないぞ」


「はい。ごめんなさい」


「うん、気を付けなさい。それよりよつ葉の顔が見れて嬉しいよ」


「ありがとう。よつ葉も(パパに)会いたかった」


 談話室のためパパに抱きつきたいのを抑えて、パパって言うのも心の中だけに留めた。


 パパは前原君とよつ葉を交互に見て何かを言いたそうだったけど何も言わず


「大学に戻るんだろう? 印鑑をいただいてきなさい」


「・・・・」


「ほら、行きなさい」


「はい」


 ……パパ……


 談話室だし、みんないるし仕方ないのはわかっていたが寂しい気持ちが込み上げてきたけど、ここは病棟。よつ葉の決めた「病棟では泣かない」「できないって言わない」「笑顔を忘れない」を実践しようと頑張った。


「前原君、ナースステーション行ってくるね」


「おう、行ってこい。怒られて泣くなよ」


「泣きたくなったら尚君の胸くらい貸してあげるわよ」


 舞花さんも声をかけてくださった。


「何なら俺の胸でも……」


「K! あんたの胸は必要ないから!」


 いつものように賑やかなこの二人のやり取りは癒される。そう感じながら談話室を後にしてナースステーションに向かった。


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