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夢はひとりみるものじゃない  作者: 小林汐希・菜須よつ葉
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38話

 パパと過ごしたクリスマスが終わり、パパは病室に、よつ葉は統合看護の延長というもとの状況に戻った。


 元の生活に戻ったある日、まだ冬休み中の姉が地元の友人と会った帰り、よつ葉の家に泊まりにきた。


「おねえちゃん、いらっしゃい」

「お邪魔しまーす」


 お姉ちゃんは部屋をクルッと見渡し


「相変わらず殺風景な部屋だよねぇ」

「だからお姉ちゃんが助けてくれてるんでしょ」

「まぁ、そうだけど……」


 と文句を言いながらも、妹思いの姉だったりする。


「ねぇ、お姉ちゃん」

「ん?」

「パパの事なんだけど……」

「明日、病院いこうと思ってるよ」

「はやっ!」

「のんびりしてたら新学期始まっちゃうじゃない。学校休めないもん」

「明日、パパびっくりするだろうなぁ」

「言ってないの?」

「うん!」

「馬鹿よつ葉」

「えぇ~~」


 お姉ちゃんが、嬉しそうな顔をしているのがわかった。久しぶりに姉妹揃って語り合った。





「菜須さん、お姉さま見えてるわよ。実習は何とかするから着替えてお姉さまと小林さんの病室へ行きなさい」

「はい、ありがとうございます。お言葉に甘えてそうさせていただきます」


 着替えてナースステーションに戻ると河西看護師長に声をかけられた。


「ふたりで病室で待っていなさい。談話室だろうから呼んできてあげるから」


 その言葉に甘えて、姉とパパの病室へ向かう。


 パパが病室に戻ってきて驚いたような顔をした。


「よつ葉、今日の実習は終わったのか?」

「うん、今日はお姉ちゃんが来るって、看護師長さんにも言ってあったから」

「そっか……。ふた葉……。迷惑をかけてすまなかったな」

「お父さん……、話はみんなよつ葉から聞いてる。今さら当時の話にどうこう言うつもりはないから。ただ、自分も仕事の関係で地元を離れちゃってるから、先日までのようによつ葉のことを見ていてもらえるって分かって逆に安心した」


 お姉ちゃんもパパも、距離を感じることもなく普通に話せている。やっぱり姉とも父と娘だなぁと思う。少し話してあったことで内容をすぐさま理解をして姉の話を聞くパパ。



「また教員採用試験受けるの嫌じゃない。しかもそんなくだらない理由でもう一度最初からやり直せっていうの? そんなバカな話なくない?」


 久しぶりのパパと姉だけど、やっぱりこのふたりも父娘だなぁと思う。


「ええ、話はよつ葉から先に聞いてる。あたしは別に名字がどう変わろうと気にはしないから。それに、今は結婚して戸籍の姓が変わったとしても、職場では旧姓ってことも多いから、そんなのはどうにでもなる話じゃない?」


「そうか、また迷惑をかける事になるな。それに、確実に出来るかどうかはわからないぞ?」


 本当に久しぶり、父娘三人での報告が続いた。


「ふた葉、よつ葉。さっきの話を進めても構わないか? お前たち二人が賛成してくれれば、俺はそれに向けて動き出す。もしかすると家庭裁判所の担当者とかが面談に行くかもしれないが、それは許してほしい」


「あたしは別に平気。それよりも、これだけ近くにいたのだから、よつ葉を守ってあげてほしい」


「分かってる。それはあと2ヶ月、どうよつ葉を守りきるかだ」


「パパ、この延長実習なんだけど、年末の区切りがいいところで終わろうかって、看護師長さんが言ってた」

「そうか……」


そしてパパが


「それなら、何もない時間帯はこの部屋で勉強していればいいんじゃないか? テーブルも椅子も自由に使っていい。どうせ個室だ。ドアが閉まっていたって、誰も気にする人はいない。家族なんだから面会時間だってあってないようなもんだ。河西さんには俺から話しておく」


「パパ……、それでもいいの?」



「よつ葉のこと、悪いけどお願いするわ。何か協力できることがあったらいつでも教えてちょうだい」


 姉がパパに向かって声をかけた。


「分かった。そのときは頼むな」



 色々話をしていて、夕食の時間になりパパの食事が配膳されてきた。パパがよつ葉と姉に売店で弁当を買ってくるよう言われパパが姉にお金を渡していたが、姉は私も稼いでるよって笑っていたが、これくらいさせてくれというパパの言葉に、姉はこれも親孝行と捉え、素直にお金を預かりふたりで売店でお弁当を買って病室に戻り三人で夕食を済ませた。私達姉妹が病室を後にしたのは面会時間はおろか、病棟の消灯時間も過ぎていた。

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