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異次元袋

宿に帰ってさっそくよしえさん達に今日の出来事を一通り話した。


1人で買い物に行ったけど革袋をスラれた事。なんとか犯人は捕まえたけど結局お金はあげてしまった事。


剣は買えなかった事。そして、ピースさんというナイスミドルと知り合った事。


「ホップ商会のピースさん・・・。」


「はい。なんかそんな事を言ってました。優しいナイスガイでしたよ。」


「それアレやわ。その人、めちゃくちゃ有名な人やで。『ピースマークのホップ商会』って言うたら知らん人はおらん。ってくらい有名なグループや。色々な街にお店出してるで。ピースさんはその商会の会長。一番偉いさんやね。」


どうやら想像以上に大物に助けてもらったようだった。


「へ~!そんな人だったんですか!」


「あんまり表に出えへんタイプの人らしくてな。グループ自体は長い歴史があるんやけど、当代の会長は若いのにやり手やとかなんとかで、かなり有名やな。そんな人に会えてラッキーやったな。」


「よしえさんは会った事無いんですか?」


「無いなぁ。というか顔も見た事ないわ。」


『そんな有名なのに顔も見た事ない・・・』と言いかけて、ふと考えた。


僕が元居た世界なら、大手企業の会長となればネットで検索すればすぐに調べられる。なにかこう、キャベツでも持った感じのポースの写真で経営理念だのなんだのを語るホームページがすぐ見つかるだろう。


でも、この世界にはテレビもネットも無い。正確にはテレビもどきがあるけど、普及はあまりしてないようだ。


なので、僕が思う以上に映像としての情報は伝わりにくいのかもしれない。実物を見る以外には知る手段がないからだ。


もしかすると僕が知らないだけでカメラもどきがあるかもしれないけど、少なくともこの微妙に物知りっぽい女神様が見た事無いというのだから、かなりレアエンカウントだったに違いない。


そう思うと、この世界での口コミというのはかなり重要なのかもしれない。変に有名になると名前や評判だけが良くも悪くも先走ってしまう可能性がある。生き方には気をつけないといけない。



「じゃあ、お金スラれたりしたけど僕はかなりラッキーだったんですね!名刺ももらっちゃったし。でもそんな凄い人なら、どうせなら助ける側に回りたかったですねぇ。」


「せやなぁ。まぁそこはマー君やししょうがないな。」


マー君やしってなんだよ。


「でもまさよしさんってなんか凄いですね!ここの世界に来て知り合った人って、女神様とか超一流のメイド様とか国王様とか大きな研究所の教授とか、大商会の会長とか!どんな人脈だよ!って感じですよね!」


そう言われてみれば凄いラインナップの中に超一流のメイドが入っているのがなんとも。



「でもなんか、こう、上手く言えないんですけど、含みのある感じっていうか・・・。僕が魔法を使えないって事を言った時もなにやら考え込んでたみたいだったし。」


「ふ~ん・・・。単純に珍しかったんちゃう?一応マー君は見た目貧しい感じでもないし。そのスリの子ってのは見た目から貧しかったやろ?普通、魔法を使えへん人っていうのはその子みたいな人を指すからな。」


だからと言って特にお金持ちにも見えない見た目なので、そういう意味では『魔法を使えない』というのは相当な貧民である事を指すのかもしれない。


「珍しい・・・?いや、そんな感じでもなかったような・・・。また会うかもしれないとか言ってたし。でもまぁ、考えてもしょうがないんですけどね。」


「相手はやり手の商人やからな。そんな風に意味深な事言うて印象付けようとしただけかもしれんで。」


「そんなもんですかね?」


「わからんけどな。」


ピースさんの言う通り、またどこかで出会う事もあるんだろうか?もらった名刺は大事な物になるかもしれないので、破ったりしないように気をつけないと。



そしてそれから数日後。



セタさんの使いの人が宿にやってきて、ついに例の新しい道具とやらが完成したようなのでみんなで行く事になった。


「長かったなぁ~!まぁたぶん良い物を作ってくれるんやろうからあんまり色々言うたらアカンやろけど。楽しみやなぁ!」


「そうですねぇ。もうあれじゃないですかね。ボタン1つでその辺焼け野原にするくらいの威力の道具かもしれませんよ。」


「いいですねそれ!まさよし砲・改!世界は滅びる!みたいな。」


滅ぼしたらダメなんじゃないかな。




「よく来てくれた!まさよしはそんなに久しぶりでも無い気がするが、よしえとマキノは久しぶりだな!まぁあんまり長い前置きがあってもなんだし、さっそく本題に入ろうか!」


賢いロリ可愛いエルフさんが、明るい感じで出迎えてくれた。そんなに長い付き合いでもないけど、結構面倒見がいいというか、付き合いいい人だよなと思う。


「まずは・・・。マキノからだ。マキノには、新しい靴を用意した!」


そう言って、なにやらごちゃごちゃ入った大きな袋の中から、マキノさんが使っている空飛ぶ靴に似た感じの新しい靴を出してきた。


「これは、普通に市販されている物よりもさらに魔力の伝達の効率が良い物を作った。市販のそれよりかなりピーキーな作りになっているが、そもそも市販の物は戦闘用じゃないからな。」


そういえば最初の頃に、確か自分で色々改良してるみたいな事をちょっと言ってたような気がするけど、そうだよね。そもそも人を蹴る用の物じゃないよねきっと。



「わ~!嬉しいです!私にもあるなんて!」


そう言って嬉しそうにするマキノさん。


「さらに!その辺の物とは大きく違う特徴があるのだ!」


エッヘン!と胸を張るエルフさん。この世界でもドヤ顔という言葉があるのかどうかは知らない。


「その靴のかかとの部分に薄い板が入っている。その板には、かなり大容量の魔力を貯える事が出来、さらに必要に応じてその魔力を使う事が出来る。」


そう言って、靴のかかとの部分から薄い板を取り出すセタさん。


「普段使う分にはこれまでと同じ感じで使える。で、いざという時というか、ここぞという時にその板の分の魔力を使ってブーストをかける事が出来る。キックのインパクトの瞬間とか、急いで逃げる場合などにな。出力の調整に関しては、自分の意思で調整できる。」


「おぉ!なんか凄い!・・・で、その大容量の魔力とやらの補充方法は、やっぱりアレですかね?」


マキノさんの言葉をキッカケに、みんなの目線が一斉に僕に向かう。


「そう!まさにそれだ!その板をちょっとまさよしに握ってもらえば魔力の補充は完成だ!」


「なんというか、自分で言うのもなんですけど、僕って凄い便利ですよね・・・。」



「そして次にこれ!これはよしえ用の道具だ!」


セタさんは、今度は何かようかんのような細長い四角い物体を取り出した。


「なんやの。私にもなんかあるんかいな。」


「どうやらよしえは本気を出すと魔力の消費が相当激しいようなので、これはその魔力切れを補う物だ!この道具にはかなり大容量の魔力を貯える事が出来、さらにこれを握る事で魔力の補充を行える!と言っても、誰でも同じ事が出来るわけではないんだけどな。外から魔力を取り込む事が出来るらしいよしえ専用とも言える。」


いわゆるモバイルバッテリーの魔力版と言ったところだろうか。魔力を外から取り込むのはよしえさんが女神だから。みたいな事を言ってたような気がするんだけど、その辺についていつの間にか説明したんだろうか。


「なんか、なんとなく今さっき似たような説明を受けたような気がするんやけど、もちろんその魔力の補充先っていうのは・・・。」


またしても、みんなの視線が僕に集まる。


「そう!それだ!」


『まるで人では無いかのように扱ってしまうかもしれない』という部分が本日も絶好調。いいんだけどね。みんなの役に立てて嬉しいし。



「そしていよいよまさよし用の道具の数々だ!まずはこれ!」


まるであの猫型ロボットの用に、大きな袋から数々の便利道具を取り出すセタさん。


「まず最初は、まさよしに頼まれて作った『魔力を雷の魔法に変換して外に出す道具』だ!まさよし命名で、その名をスタンガンという!」


「おぉぉぉ!本当に作ってくれたんですか!凄い!凄いですよ!」


実は、この魔法都市にいる間にひらめいたアイディアを何度か提案しにここへ来ていたのだ。その度丁寧にもてなしてくれ、真剣に話を聞いてくれるセタさんは本当に面倒見がいい。



セタさんは、懐中電灯に似た見た目のその道具の使い方を説明してくれた。


「この手元にあるスイッチを押すと、使用者の魔力が変換され雷の魔法として先端部分で発生する。まさよしが使うととんでもない破壊力になってしまうかもしれないので、出力は一応適度に人体に有害な程度で止めてある。」


適度に人体に有害ってどんな程度なのかよくわからないけど、僕のイメージがかなり伝わったと思う。


「それはどうやって使うん?」


「こうね。相手に押し当てて使うんですよ!スイッチを押してバチバチっ!って感電させて、動きを止めたりするのに使うんですよ!凄いでしょ!」


やはり何度考えても攻撃的になるのは難しそうなので、間接というか補助的な部分を充実させていこうと思ったのだ。


「なんで手元限定なん?どうせなら、遠くまで出るようにしたらよかったのに。」


「そうすると、僕はコントロールが全然出来ないので味方を巻き込む可能性が高いと思ったので。後ろからいきなり雷で打たれるの嫌でしょう?」


「あ~確かにそれは困るわな。・・・せや。せっかくやし、ちゃんと動くか確かめなアカンからここで1回使ってみてよ。」


「わかりました!」


よしえさんに促されて、異世界版スタンガンのスイッチを押してみる。


すると、棒状の道具の先端部分から10cmほど離れた場所に、直径20cm程の光る円盤状の何かが発生した。


「・・・これだけ?」


想像と違ったのだろう。露骨にガッカリした様子のよしえさん。


「ちょっと試しに触ってみよか?ちょっとくらいなら大丈夫やろ。」


そう言って、よしえさんが手を伸ばそうと・・・。



「触るな!!」



急に大声で怒るセタさん。



「え!?あ、あぁ・・・。すいません。」


「いいか。絶対にその円に触ってはいけない。絶対にだ!」


「いや・・・でも・・・。適度に人体に有害ってレベルなんでしょう?そりゃ痛いかもしれないけどそこまででも・・・。」


僕達のそんな話を聞いて、セタさんが目をそらした。


「・・・適度、なんですよね?」


「道具自体が壊れない程度には。」


先端の丸い円盤を注意してよく見てみると、凄い速さで小さな何かが動いている。ついでに、ギギギともジジジとも言えない不思議な音がする。


「その円盤は、まさよしの魔力を超高密度で集めて発生させている。それでも一応は出力にリミッターを付けたんだぞ?まぁ、とにかく、危ないから触るんじゃない。そもそもそれは危険な事に使う物なんだろう?」


果たしてこれはどれほどの威力なのだろうか?試しにそのままセタさんに近づけてみたら、死ぬほど怒られた。大丈夫なのかこんな物もらって。



「そして次はこれ!これもまさよし命名で『閃光球』だ!使い方は簡単。この球を握って魔力を貯め、手から離して1秒程で光る。最初ここに来た時に魔力の測定用に使ってみたあの球の改良版だな。あれと違うのは破裂しない事くらいだ。」


「お~~~!これも凄い!嬉しいですよ!これでモンスターの目を見えなくしたりするんですよ!」


「強敵相手に奇襲から入る勇者!いいですね!合理的で私は好きですよ!」


「せやな。正面から戦うのが苦手なマー君にピッタリや!」


ヒドイ言われようだなぁ。


「でも、これだと私達もまぶしくないですか?」


「そこで!これもまさよしの発案だが、この『サングラス』が登場だ!」


まるで深夜の通販番組のノリで、どんどん色々な物が飛び出すセタ袋。


「なんですかこれ?そもそも、どうやって使うんですか?」


「これはだな。こう、この細い棒上の曲がったところを耳にかけて・・・。」


僕が作ってもらったサングラスの使い方の説明がセタさんから行われた。



最初にこの閃光球のアイディアを思いついた時に、当然『自分達もまぶしい』という欠点には気付いた。


なので、サングラスもついでに作ってもらおうと思った。光を通しにくい素材というのはすぐに見つかったけど、実はこの世界にはメガネという文化が存在しなかった。


何か特別な理由で目が悪くなっても、回復魔法で治るのだ。だから、視力が落ちるとか、それを補助する何かだとか、そういう物が必要ない世界だったのだ。


目玉自体がエグられたとしても、回復魔法で数秒後には治るのだ。改めてとんでもなく便利だ。この世界では目玉のおやじは存在しない。



「じゃあさっそく、使ってみましょうよ!」



みんなでサングラスをかけ、さっそく閃光球を光らせてみる。僕が球を握り、しばらくしてからポイっと前方に投げた。


それから1秒程で、突然音も無く凄まじい光が放たれた。


「おぉぉぉぉ!光も凄いですけど、それでもまぶしくないこのサングラスも凄いですねぇ!感動ですよ!」



それから3分後。



「まだ光ってますよこれ・・・。長過ぎなんじゃないですか?」


「せやなぁ。こう、もうちょっと、加減ってもんができんやろか。」


「で、でもほら。これだけ光ってればどんな敵でも無力化できますよ!」


トータル5分くらい発光したところでようやく光は収まった。


「一応言っておくが、まさよしの魔力量が異常すぎるので微調整は本当に難しいんだからな?これでも結構大変だったんだぞ?」


あせるロリセルフ可愛い。



「そして、いよいよこれが大本命!私が作った、まさよしのための剣だ!」


これでもかというドヤ顔で、セタ袋から剣が取り出された。


「おぉぉぉぉ~!」



ほどばしる主人公感。いよいよ無双の始まりの予感がする。

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