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そこにエロスがあるからです

「な、なんだこのハートマークのボタンは・・・。」


他に事務的な数字が並ぶばかりのリモコンの中に、なぜか1個だけハートマークのボタンがあった。


も、もしかしてこれは・・・。


そう。僕が元居た世界でも、宿やホテルといえばこういうのが必ずあった。男の憧れのアレだ。


ゴクリっ・・・。思わず生唾を飲み込む。当然僕だって、脳内にいる戦士のレベルはそれなりに高い。こういうアレやソレを見た事が無いわけではない。



しかし。しかしだ。ここは異世界なのである。



もしかすると、僕が知ってるアレやソレとは違うアレやソレなのかもしれない。その、体?の構造?みたいなものが、見えるところと見えないところでほら。全然違うかもしれないじゃない?


それにほら。なんというか、なるべく意識しないようにしてきたけど、こう見えて実は男1で女2のパーティーで旅をしているわけだし、将来的にはほら。どうなるかわからないじゃない?


ローカルルール?みたいな?こう、この世界独特の手順ていうか、マナーみたいなものがあるかもしれないじゃない?



そう。そういう事について学んでおく事は、今後の僕の異世界生活において非常に重要な、これでも一応ドラゴンスレイヤーのまさよしとして、知っておくべき紳士的な振る舞いのそれ。



よし押そう。今すぐこのハートマークを押そう。そして、大人の階段の裏面に突入しよう。


・・・そういえば!裏面といえば!・・・どうなんですかねその辺。異世界的に。裏面とかあるんですかね?



みなぎる期待感。僕のパトスがほとばしる。



そして、いよいよ押そうと部屋のトビラの鍵をきっちり閉めたか確認したその時。ふと、思いついた事があった。



有料だったらどうしよう?



そう。この手のアレやソレはだいたい有料と相場が決まっている。大人の階段登るのには手数料が必要なのである。


まぁどうせ、ヒコーネ王家のオゴリだから、どれだけお金を使ったとしても僕達の手元に請求書が回ってくるようなみっともないマネはしないだろう。



しかし。しかしだ。



宿泊料金が金貨30枚とんで銅貨2枚。みたいなお会計になった時に、なにこの端数?とかいう話にならないだろうか。


で、王家の方々が、もしかしてお前らぼったくろうとしてね?という話になって詰められて、いや実はお連れ様がお1人その・・・。このチャンネルをですね・・・。


となったら。元の世界では1家に数台がもはや当たり前の勢いで普及しているが、この世界では違う。魔法技術の最先端を研究しているこの街の、高級な宿が誇る最高の設備としての位置がこのマジック・ビジョンとやらだ。


その、世界最高峰の技術でアレやソレを視聴する・・・。



最高じゃないか。



いやいやいや!違う!そういう話じゃない。そういうのは、一応王様からの招待を受けた客としてみっともないよね?なんならヒコーネ人てどうなの?みたいな話になるよね?



あぁダメだ。考えれば考えるほど頭がおかしくなりそうになる。そういえば、この世界に来てからというものその手の刺激もずいぶんご無沙汰だ。そういう環境もよくない。



そうこうして悩んでいるうちに、僕の部屋に来客がやってきた。よしえさん達だ。



「マー君!マジック・ビジョン見た?凄いなこれ!最高やわ!」


「本当ですよ!私なんて最初、この中に人が入ってるのかと思いましたもん!」



そう。これが正しい反応だ。異世界標準はこうでないといけない。なんやかんやで結局エロい事にばっかり使われるようになりますよ。というのは、まだまだこの世界の人達には早過ぎる話なのだ。未来人になった気分だ。


「す、凄いですよね!僕もびっくりしましたよ!」


ここは合わせておこう。僕が居た世界ではこれくらい当たり前でしたよ?とかだいぶ残念な奴だから。


「ほな今からマー君の部屋で3人で一緒に見ような!今日は徹夜や!寝かせへんでぇ~?」


「やった~!私ちょっと怖いのとか見たいです!じゃあ、今から部屋に戻ってお菓子とか持ってきましょうか?楽しみ~!」


これからおそらく長い付き合いとなる女子2人組と深夜のテレビ鑑賞会。そう。これこそが、最高の僕の憧れたシチュエーションではないのか。一時のバカな欲望に負けてどうするまさよし!



「・・・あの、なんか、僕今日ちょっと飛空艇で酔ったみたいなんで気分が悪いんで先に寝ようと思うんです。申し訳ありません。」



ピシャリ!と断った。ずいぶんしょんぼりした顔をしていたようだが仕方ない。あぁ仕方ないのだ。


いくらか好感度が下がったかもしれないが、とにかくこれで急に邪魔が入る事も無くなった。この部屋担当のメイドさんも、僕が自分から呼ばない限りは待機部屋から出ないだろう。


よし。いこう。勇気を持って、今日こそはいこう。いざ!異世界のショータイムへ!



ポチっとな!!



・・・なんの反応も無い。おかしい。画面は相変わらずバラエティーだ。さっきまで凄い面白かったのに、なぜか今は色あせてみえる。


こう、色々ジャンルを選択出来る画面とか、なんか内容が無いようなインタビューとか始まるんじゃないのか。


手に持ったリモコンがどこか壊れているのかとクルクル見渡したところで、部屋のトビラがノックされた。



「まさよし様?なにかご用でしょうか?」



この部屋担当のメイドさんの声がした。



・・・はっはーん。なるほどね。そういう事ね。なるほどね。知ってたよ。うん。知ってた。



テーブルの上に置かれた説明書を読んでみると、ハートマークのボタンの説明にこう書かれていた。



『メイドをお呼びの際はこのボタンを押してください』



と。


「・・・すいません。ノド乾いたからなんか飲み物ください。」


この宿で出されたジュースもまた美味しかった。もう寝よう。今日は疲れたから。

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