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王様とご対面

そして翌日。僕達の元へ従者の人がやってきて、ついにお城に向かう事になった。


あんまり深く考えないようにしてきたけど、今さら緊張してきた。よく考えたら王様から呼び出しってなんだよ。とんでもない事じゃないか。


宿から馬車に乗る事数分。ヒコーネ城とやらにやってきた。


「大きいですね~!」


遠くから見るのとはまた違った感じの存在感がある。城。まさしく城である。洋風の城というのは、そういえばあまり見る機会もない。


元の世界では、高速道路の入り口付近によく建っているのを外から見る程度だった。外から。


「ではこれからお城に入ります。注意点が1つだけありまして、絶対に私に着いてきてください。見失うと迷子になるかもしれませんので。」


そう言って、ニッコリ笑うさわやかイケメン。朝からさわやか。



お城に入って歩く事数分。豪華な内装に目を奪われて時々イケメンを見失いそうになった。お城を歩いていてわかったのが、とにかく構造が複雑だという事。


目指す場所が王様のいる場所だから。という事もあるのかもしれないけど、階段を上がったかと思ったらしばらく廊下を歩いて階段を下ったり、同じような作りの場所をウロウロしたり。


「なんやえらい歩くやないの。私もう疲れたわ。」


「ま~たそんなオバサンみたいな事言ってぇ。本当は全然疲れてませんよねぇ?」


メイドさんとパーマさんが妙に仲良しになってる気がしてちょっとジェラシー。でも、僕の心にやましい部分があるからそう思うだけで、実は2人でちょいちょいおでかけしてたりするんじゃないかと思った。



どうしてこんなに複雑なんですか?と従者の人に聞くと、王様が暗殺されたりするのを防ぐため。だとか。確かに、ゲームでよく見るようなお城入って真っ直ぐ歩けば王様が玉座に。とか、無用心極まりない。


突然激怒した謎の民が襲いにこないとも限らない。そう思うと、むしろ魔王陣営の方が格段にセキュリティ意識高い。



「こちらになります」


従者の人はとある部屋の前でそう言って立ち止まった。


「おぉぉ・・・。」


それは、威厳のある荘厳な装飾が施されたとても立派な扉で・・・。というわけでもなく、普通の扉だった。


「え?なに?ここですか?」


思わず声に出して聞いてしまった。


「はい。こんな普通の部屋に王様がいるなんて思わないでしょう?」


とニッコリイケメン。まぁ確かに。もう1回1人で来いって言われたら絶対無理だしね。


というか、ついに王様とご対面である。王様て。


「あ、あの、なんか、作法とか、礼儀みたいな事とかあるんですか?失礼になったらいけないし・・・。」


そういえばマナー的な事とか何も知らない。ノック2回で入ったら死刑。みたいなルールがあるかもしれない。


「大丈夫ですよ。あくまでこちらからの呼び出しですので、楽にしていてください。」


本当かよ・・・。


「では、お入りください。」


そう言ってドアを開けてくれるイケメン。あぁヤバイ。ドキドキしてきた。


「し、失礼します!」


部屋に入ると、そこに居たのは少し若い感じがするが立派なヒゲをたくわえた、the 王様だった。思わず声を上げそうになるがグっとこらえた。



「おぉ!そなたらがよしえ一行か!まぁ立ち話もなんだから座るがいい」


王様が、僕達を座るように促す。


それにしても、どうしてこんなに普通の応接間風なんだろう。まぁ別にいいんだけどね。威厳とか何もないなぁ。


王様の対面にあるソファーに腰掛ける僕達3人。


「まず・・・。そうだな。想像していたより少し個性的な見た目というか・・・。統一感があまりないな。」


なんとなく、自分の中で『異世界だから』で済ましていた事実を真っ直ぐ王様に指摘された。こちらのメンバーは、左から順に凡人の男、チリチリパーマのオバサン、メイドさん。モブしかいない。


「その、真ん中の、ちょっと変わった髪型の者がよしえか?」


ですよね!と大声を出しそうになった。僕が異世界に来てからというもの、よしえさんの髪型にツッコミを入れる人が誰もいなかった。もしかして異世界では割と標準的な髪型なのかも?と思い始めていた。


そこに、王様は剛速球を投げてくれた。よかった。異世界でもチリチリパーマは変わった髪型。


「はい。私がよしえです。この髪型は、私の村の掟で、夫を亡くした者は生涯この髪型で過ごす事が決まっていまして・・・。」


と、真顔でやや下を向きながら答えた。王様相手にウソをついたぞこの人は。しかも、なかなか巧妙なウソだ。村の掟とかいう精神的な支えっぽい理由に身内の死というコメントしにくい話をミックスする事で完璧な理由をでっちあげた。


「・・・なるほど。それは失礼な事を聞いた。気を悪くしないでほしい。」


真顔で返す王様。笑いそうになるが我慢した。


「そして、そなたがまさよしか?」


僕の顔を見て王様が言う。


「は、はい!まさよしです!」


「そうか。」


「はい!」


・・・他に特に言う事も無かった。


「最後に、そちらは従者かなにかか?」


マキノさんの方を見て王様が聞く。


「いえ!マキノさんは、従者ではなく、僕達の大切な仲間です!」


やや大きい声で僕が答えた。これは決まった。マキノさんは、僕達の対等な仲間だ!


「そうか。」


「はい!」


・・・滑ったようだ。耳まで赤い。何?王様は僕が嫌いなの?


「お初にお目にかかります王様。私は、マキノと申します。お2人と一緒に旅をさせてもらっています。」


そう言って1度椅子から立ち上がり綺麗な礼をするマキノさん。


「マキノか。なるほど。見事な礼だ。教養があるのだな。わかった。」


これで、1通りの自己紹介が終わった。



「さて。まず尋ねたいのだが、そなたらがレッサーデーモンを討伐したというのは本当か?」


さっきまでよりやや真面目な顔とトーンで僕達に聞いてくる王様。


「はい。私達が討伐しました。」


よしえさんが答えた。そういえば関西弁じゃない。


「あれはかなり手強いモンスターだと思うのだが、3人で倒したのか?」


「はい。王様のおっしゃる通り、相当手強いモンスターでした。紙一重の勝利でした。」


言いたい事は無くもないが、とりあえず黙っておこう。


「・・・そうか。実はな?ワシもこうして王などやっているもので、割と目や耳が色々な場所にあるのだよ。」


何かマズイ流れになりそうな・・・。


「そこのよしえが、女騎士のような見た目に変身し、さらにレッサーデーモンに魔法を連続で放ち圧倒した。というウワサを聞いておるんだが・・・。ワシの目や耳と、そなたらの話。どちらが本当か?」


よしえさんのしょうもないウソがバレた。何も隠すような事でも無かったのに。王様の機嫌が悪く・・・。


「と、いうのはまぁ置いておこう。誰しも言いたくない事秘密にしたい事などあろう。変に目立っても困る事もあるだろうからな。別に怒っているわけではない。」


よかった・・・。


「さて。ここまでが前フリだ。では本題に入ろう。そなたらは、なんでも魔王討伐を目標に旅をしているらしいな。」


「はい。」


「ワシとしては、そなた達を応援したい。それなりの実力もあるようだしな。」


「ありがとうございます。」


「で・・・。だ。どうして、魔王という存在を討伐しようと思うのだ?あれはおとぎ話のようなものであろう?本当にいると思うのか?」


今日一番の凄みで聞いてきた。なるほどこれが王様か。そう思わせる気迫があった。


「・・・はい。私は、魔王は存在すると考えております。必ず、討伐するべきである。とも考えております。」


よしえさんは王様の目を真っ直ぐ見てそう答えた。こちらも気迫負けしていない。


「そうか・・・。わかった。何を根拠にいると思うのか?と聞きたいところだが、どうせ真面目に答えはしないだろう。ただ、ワシは王だ。これでも人を見る目はあるつもりだ。少なくとも、そなたの目には強い意志がある。」


気付けば僕は強く拳を握っていた。凄い緊張感だ。


「・・・1つ、ワシの願いを聞いてくれないだろうか?それを叶えてくれれば、そなたらの目的に少しだけ近づく方法を教えよう。」


王様の願いってなんだろう。さっきからただ聞いてるだけになってきた。とことんモブだ。


「ここから少し馬車で行くと、イブキ鉱山というマナストーンの鉱脈がある山がある。その鉱山に最近ドラゴンが住み着いておって採掘が出来なくなったのだ。それを、なんとかしてほしい。」


ドラゴンて本当にいるんだ。あまりに現実感が無さ過ぎて全然ピンとこない。なんでまたそんな所に住んじゃったのかなドラゴンさん。


「別に、必ず討伐してほしいというわけでもないのだ。ただその鉱山が自由に使えるようになればそれでいい。立ち退かせてくれるだけでもいいのだ。」


それにしても、王様が困っているほどなのだから、このドラゴンとやらも相当にお強いんじゃないかと思われる。ちょっと考えた方がいいんじゃ・・・。


「わかりました。お受けします。」


即答するよしえさん。まぁ他に手がかりもないし乗っかるしかないんだけど。


「そうか!引き受けてくれるか!では、こちらからもいくらか物資を支給しよう。命がけの頼み事をするのに何もしないではあんまりだからな。準備が整い次第宿に使いを向かわせるが、それでよいか?」


「はい。わかりました。」


「よし。では今日はここまでとしよう。」



こうして、はじめてのえっけんは終了。ドラゴン討伐を引き受ける事となったのだった。

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