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足りないもの

「よしえさん!僕、強くなりたいんです!」


僕は、自分と異世界の謎を解き明かすために、魔王を討伐する事を決めた。


そのためにはまず、僕自身強くならないといけない。ただよしえさんの強さの後ろをついていくだけでは何のためにこの世界に来たのかわからない。


「強くなりたいんかぁ。なるほど・・・。よしわかった!ほな、私が鍛えてあげよう!」


「・・・よしえさんが?」


「せやで。なんか文句あるか?」


まぁ、正直他に何かあてがあるわけでもないし、しょうがないっちゃしょうがないんだけど・・・。


シャイニングさんならまだしも、このチリチリパーマのオバサンに果たしてどれほどの・・・。


「あ!今、ちょっと私の事バカにしたやろ。よっしわかった。すぐ後悔さしたるからな!」


こうして、僕とよしえさんは稽古用の木刀を2本。武器屋に買いに行った。


「よ~し!どっからでもかかってこいモヤシっ子!」


我が家の庭で、パーマネントミセスが木刀持って僕を煽る。


しかしまぁ、いくらなんでも女性を木刀で殴るというのはちょっと気が引けるんだけど・・・。


「遠慮せんと!ほら!はよぉ!それともアレか。やっぱり童貞は自分のバットしか使えませんかぁ?」


ふざけた顔で煽ってきた。よ~しみてろよこの野郎!後悔させてやるからな!!


「僕のテクでヒィヒィ言わせてやりますよ!」


そう言って、木刀をよしえさんに打ち込む。顔を狙うのは怖いのでまずは腹辺りを・・・。


「その遠慮が、命取りになるんや。」


よしえさんは、僕が打ち込んだ木刀をいとも簡単に弾き飛ばした。


「・・・え?」


そして、そのまま僕のお腹目掛けて攻撃してきた。


「ぐえぇ!」


あばらに木刀が食い込む。まさか自分が攻撃されると思ってなくて、思わずうずくまった。


「マー君。なんのために強くなろうと思うんや?今、自分が攻撃されると思ってなかったやろう?もし、これが真剣なら死んでたわけや。」


さっきのふざけた煽りはどこへやら。真面目なトーンでそう言った。


「でも・・・。そんなすぐに強くなんて・・・。」


「そうやないねん。弱いのはしょうがない。問題はそこやなくて、これは、自分の命を守るための訓練なんよ。」


わかるような、わからないような。


「私は敵や。マー君を殺したゴブリンや。実際、今の私とマー君の差はそれよりはるかに大きい。つまり、私を殺す気でかかってくるくらいでないと、話にならんよ。」


殴られたあばらが痛む。そして、癒えたはずのお腹のキズが、心が痛む。


「お子様のチャンバラゴッコがしたいなら、なんぼでも負けてあげるし手加減するで。でも、マー君が望むのはそういう事ではないやろう?」


「・・・わかりました。」


僕は、まだ甘えていたようだ。よしえさんをなめていた。ここは異世界。僕が望むのは、命のやり取りの世界で生き抜く事。


そして、おそらくはモンスターの頂点に立つであろう魔王を討伐する事だ。


「うおおおおおぉぉお!!」


剣術なんて、全然わからない。剣なんて扱った事もない。でたらめで適当な僕の剣を、全力でよしえさんの頭部めがけて振り下ろした。


ガァン!!と大きな音を立て、僕の剣はよしえさんに防がれた。木刀を持つ手がしびれる。


「そう。それよ。剣としては全然話にならんかもしれんけど、大切なのはそこに魂がある事や。」


パーマネントミセス師匠がそう言った。


「はい!わかりました!ありがとうございます!」


「よし!確かにこのまま魔王とか言うてもマー君死ぬだけやしな!しばらくは修行やな修行!ボッコボコにしたるから覚悟しぃや!」


こうして、パーマネントミセス師匠との修行の日々が始まったのだ。


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