彼女と俺
あの時の事は絶対に忘れられない。俺が中学一年生の時に君に告白した時の事を。
「俺、君の事が本気で好きだ絶対に幸せにする、だから俺と付き合ってくれ!」
今までにない恥ずかしい気持ちと勇気を使っただろう。俺は真剣だった 本気で彼女が好きだったから。けど俺の想いは届かなかった…
「ごめんなさい…私恋愛とかそういうのわからないの だからその気持ちには応えれない、本当にごめんなさい…」
そう俺は振られたのだ。そうだよな普通に考えればそうだ。中学一年生で、絶対に幸せにするって言ったところで、できるわけがない。むしろ不幸になるかもしれない。だから彼女に告白したところで成功する確率などゼロに等しい。俺の片想いは終わったのか。けども彼女は今にも泣きそうな俺に近づき出し、その綺麗な声で俺の耳元でこう囁いた。
「でも嬉しかったよ。もう少し待ってて、もう少し大きくなって、それで私が君の事を好きになったら…その時はその気持ちに応えさせてください」
それが中学一年生で最後に聞いた彼女の言葉だった。その日から彼女とは会っていない……
それから二年後…俺はまたあの彼女と予想外の所で出逢うのだった。
一章 「二年後の再開」
俺の名前は篠崎 悠斗今は普通に中学校生活を楽しんでいる。学校の成績は優秀で運動もできるし、今は生徒会長まであるのだ。ちなみに部活は陸上部に所属している(だけどもう少しで引退だ) ただ本当に最後の一年を楽しんでいる。二年前の出来事が嘘のようだ。
「あーそれにしても暑いな」
そう道ばたで独り言を言いながらも俺は今日も学校へ向かう。そういえば今日は七月七日、七夕の日だ。こんな暑い日にみんなは何をお願いするのだろう。ちなみに俺はランニングマシンが欲しいと願う。けど今はそんなお願い事などどうでもいい。俺はこれを願う……そう思って、両手を天に伸ばして、俺は少し願い事を言ってみた。
「理央に会えますように」
理央は実は俺が告白したあの彼女なのだ。小泉 理央 中学三年生で四組だ。ちなみに俺は三年三組。教室は四階建てで俺は三階で彼女は四階だ。だから俺達は滅多に会わない。けど、七夕って言うぐらいだし、少しだけ願ってみた。でもそんな無理を叶えてくれるのだろうか。お願いします。
「しまった!そんな事してたら、足止まってた。走らねぇと間に合わねぇ!先生に怒られるーー!」
俺は目一杯の力で本気で走った………………
「コラー!五分遅刻だよ〜悪い子にはお仕置きが必要だね〜篠崎君」
「ちくしょーーーーーーーーーー」
「コラー!」と叱ってくれる人は三年三組の担任の今村 雪菜先生だ。先生は一言で言うと少し「いやらしい」のだ。いつもボタンが二個あいてるから、先生と喋る時もいつも目のやりばに困る。あと二十四歳という若さだ。まじ若いよね。
「篠崎君?聞いてる?」
「あっすいません、ボーとしてました」
「もぅー先生の事が好きだからってデレデレしちゃってーダメだよ!」
あーダメだこの人…
「あの俺、教室行きますね…」
「あっあぁ篠崎くーーん!」
俺は無視して急いで三年三組の教室へ向かった。教室のドアを開けると もうみんなは仲間達とガヤガヤと、はしゃいでいる。そりゃ当たり前だ、俺遅刻してるもん。ダメだな俺…
「おーい悠斗遅いぞー」
そう教室に入って一番最初に声をかけてくれたのは、杉本 竜太君だ。竜君は小学校の時からの付き合いで、俺の最高の友達だ。ちなみに俺が小泉の事が好きなのを知っている数少ない人物だ。
「いやぁちょっとな〜」
「ははーん分かったぞ理央の事考えてたんだろ」
「は⁉︎ い、いや考えてねーよ」
「怪しいな〜」
(お前はエスパーかよ)
こうして俺の一日が始まる……………
昼休みの教室にて竜君は俺に
「そうえば今日の五時間目の体育、三組と四組で合同で授業やるらしいぞ」
合同…合同…まさか!
「そっそれって本当か!」
「あぁ本当だよさっき先生が放送で言ってたよ、てっきり知ってるんだと思ってたけどな」
「いや全く知らなかった」
「まぁよかったな、これは小泉と話せるチャンスじゃんか」
「そっそうだな…」
まさか俺の七夕の願い事が叶ったのか…?
「キーンコーンカーンコーン」
チャイムの音と同時に五時間目が始まる。
「よーしお前ら放送でも言った通り今日の体育は三組四組で合同授業だ、仲良くしろよ」
体育の先生の一言にみんなは「はい!」と言葉をそろえる。その時の俺は返事もせず小泉の事を探していた。だが俺の行動を怪しいと感じたのか隣にいた尾崎 雄一が俺に声をかけてきた。
尾崎 雄一は三年三組の学級代表を務めているとても優しい人だ。
「篠崎君、どこ見てるの?あんまり女子の方見てると勘違いされるよ?」
「べべっ別に女子の方なんて見てねーよ」
「まぁほどほどにね」
「だから見てねーよ⁉︎」
今日の体育の授業の内容は三組対四組の男女混合リレーの勝負だった。走るのは得意だ。いける。勝てるぞ。俺は自信満々でリレーに挑もうとしていた。だが小声で喋ってる女子が、
「そういや聞いた?四組の小泉さんすごく足速いらしいよ」
「えー本当!私クラスの迷惑にならないよう頑張らなくちゃ〜」
小泉⁉︎あの人足速かったかな…………………
「よーしお前ら準備はいいか!」
もう少しでリレーが始まる中みんなが緊張してる様子がよくわかる。みんな無言だ……どんだけ本気なんだよ…
俺の走る番号は三十六番 つまりアンカーだ。三十六番と書かれたゼッケンを着て俺はもう一度みんなの様子を見ようと周りを見渡してみる…そしてついに俺は「彼女」の姿を見つけてしまった。彼女はまだこちらに気づいていないけど、三十六番のゼッケンを着ているから多分アンカーだと予想した。彼女との距離は五メートルくらいといったところだ。心臓の鼓動が止まらない。
(ドクドクドクドクドクドクドク……止まってくれ!でも心臓は止まるなよ!)
「よし、一走者目、用意しろー」
始まる。とりあえず今はリレーに集中だ……待てよ、小泉もアンカーってことは、二人で小泉と走るのか!、ヤベェまた心臓の鼓動が…
「位置についてーよーいドン!」
「頑張れー!」「負けんじゃねーぞー!」「抜け抜けー!」「ファイトー!」
今は第十走者目が走っている。今の所はやや俺達が勝っている。みんなはリレーを応援しているが、俺はそんな場合ではなかった。もう小泉との距離は一メートルもないはずだ。なのに彼女は普通にみんなと応援している。気づけよ!それとも気づいてるけど無視なの?無視なの?あーーもう少しで出番来ちゃうよ、みんな本気で走りすぎだよ。俺も本気で走るけどさぁ。
「やばいぞ三組抜かされた!」「ほんとだ三組ファイトー!」
気づけばもう三十走者目が走り始めていた。今は四組がリードしていて三組との差は二メートルくらい空いている。そろそろ「俺達」も準備しようとその場を立った。
「よろしくね。悠斗君」
「え?」
いきなり小泉が俺に喋りかけた。やはり小泉は俺の事に気づいていたのだ。でも急な事で俺は「え?」しか言えなかった。だけど俺はその時間が永遠のように感じられた。もう三十五走者目が走っているのに俺は固まってしまった。まるで俺だけ時間が止まっているかのように。
「私負けないから!」
俺も言わないと俺だって負けないからって言わないと!そうだよ、急に話しかけられたからってなんだよ。別に固まることなんてない!
「俺だって…俺だって理央には負けないから」
「悠斗君…」
その瞬間小泉と俺はほぼ同時にバトンを受け取ってスタートした。
お互い一歩も譲らない勝負をしている。
(負けない!絶対に小泉には負けねえ、勝って、惚れさせてみせる!)
惚れさせば、彼女は俺の気持ちに応えてくれると言った。だからここでいいところ見せて惚れさせてみせると思っていた。
(絶対に悠斗君には負けない、私は悠斗君に勝つためにずっと走る練習してきたんだから)
彼女の思いが届いたのかコースの半分ぐらい来たところで、彼女は俺を抜かした。速い速すぎる。俺は陸上部なのに…。段々と差が開いていく。情けねえ。
「篠崎負けるなぁ!勝てー!」
「うっ!」
竜君の声だ。他のみんなも応援してくれている。そうだ俺は負けるわけには行かない。最後の最後まで諦めてたまるか!
「絶対に負けねえええ!」
その瞬間、ゴール直前で、前で走っている小泉が何かの小石にに引っかかった。
「キャー!」
「ヤベッ!」
俺も本気で走っていたから、前でこける小泉とぶつかると分かっていても、俺は止まることができなかった。
そのまま俺も彼女にぶつかると思いきや俺は無意識に小泉を抱いて守っていた。
それからどれくらい経っただろうか。
「君…」
「斗君…てば」
「悠斗君てば!」
「ハッ!」
気がついたら、俺は保健室にいた。もちろん小泉も一緒に。
「イテテテ…一体何が」
「悠斗君と私がぶつかった後、私達すぐに保健室に運ばれたんだって、」
「ほんとか、それにしても、ごめんなぶつかっちゃって」
「いいのいいの、私がつまづいたのがいけなかったの、悠斗君怪我は大丈夫?」
「あぁ俺は大丈夫だ 小泉こそ大丈夫か?」
「私も大丈夫だよこのとお…いててて」
「おいおい大丈夫じゃないじゃんか」
「大丈夫!ほんとに大丈夫だから…気にしないで」
「そっそうか ほんとにやばかったら言えよ」
「うん!ありがとう!」
その返事をした小泉が可愛いかった。(いつも可愛いけどね!!)
「そういえば三組対四組どっちが勝ったんだ?」
俺はあのぶつかった時からの記憶が全くない。これは強く打ったな。
「勝負は引き分けって先生が言ってたよ、あれじゃあどっちが勝ったかわからないからね」
「そうか、それじゃあ残念だな。次やる時は俺が勝つ!」
「えー!私が勝つもん!」
「そうえば足速かったな」
「悠斗君に勝つためにすごく練習したんだよ!」
「マジか、本当に速かったよ」
「んふふーありがとう」
「ははは笑 次が楽しみだな」
「そうだね笑」
「……」 「……」
俺達は喋る事がなくなり、しばらく沈黙が続く。この沈黙の時間もとても長く感じた。このままどうすればいいのか。お互い目も合わせられないまま下を向いてただただ時間だけが過ぎていく。
「悠斗君…」
「はっはい」
まただ。心臓の鼓動が早くなっていくのがわかる。
「ぶつかった時の事覚えてる?」
「いやそこから俺記憶ねえんだ」
「そうなんだ……」
何やら小泉が顔を赤くて、もじもじしている。もしかしてあの時俺なんかやったのかな…
「実はね、ぶつかる直前に悠斗君が私の事守ってくれたんだよ」
「守った?全く記憶にねえぞ」
「ぶつかる直前私がこけて地面に着く前に悠斗君が私の事を抱いて守ってくれたの…そのせいで悠斗君は下敷きになっちゃったけど」
今さらっと怖い事言ったよね。
「そっそうなんだ、でもよかった大怪我はしなくて…」
「うん。本当にありがとう」
「おう!」
「少しだけ好きになっちゃった」
ん?いま小泉…なんて…?
「おっおい小泉…?」
「悠斗君はまだ私の事好き?」
「えっ」
いきなりのこの質問に俺は戸惑った。いまここで、今でも好きと答えたら彼女はどんな反応をするのか。一度振られたし好きと答えたら逆に嫌われるんじゃないか。そう考えてしまう。でも彼女は今さっき…俺の事を好きになっちゃったて言った…
(あーくそどうしたらいい)
「悠斗君…答えて…」
あぁそうだよ答えは最初から一つだ。何故俺は好きというのを隠そうとしてるんだ。ずっと彼女の事が好きなんだ。それを伝えなきゃ何が恋だ!言ってやる。思ってる事全部言ってやる!
「俺は今でもお前の事が好きだ。これからもずっとだ、絶対に俺は理央に好きになってもらう、惚れさせてみせる!何回ふられようが俺は……それでも俺は君に恋をする!」
こうして俺の七夕の日は終わった。