~1~
~プロローグ~
人は泣き、笑う。当たり前のことだ。
でももし、そうでない人がいたなら…
どれだけ笑えても泣くことの出来ない少年と、
どれだけ泣いても笑うことの出来ない少女が、
もし同じ日々を過ごしていたなら…
彼らは何を思い、何を感じるのか、気になりはしないか。
そんなお話の“はじまりはじまり”。
~笑う少年1~
いつも通り朝日が昇る。朝露で光り輝く木々や鳥達の鳴き声の美しさについ笑みを浮かべてしまう。そのまま時間を忘れて外を眺めていると、母が僕に起きるよう言ってくる。少し名残惜しくも部屋を後にし、笑顔でおはようと両親に挨拶をする。いつも通り美味しそうな目玉焼きやベーコンがテーブルに置かれており、それを頬張りながら他愛のない会話をし、笑顔で朝食を終えた僕は時計を見て慌てて学校の準備を始めた。
少し慌てて学校へ向かっていると、いつも通学路で見かけるクラスメイトの女の子がいたので、いつも通りに笑顔で挨拶をした。反応は少し頷く程度だったがこれもいつものこと。いい加減小さくてもいいから返事くらい返して欲しいものだ。そういえば彼女が笑っているところを見たことがない。別に常に彼女を見ている訳じゃないけれど少し気になった。いつも俯いている気もする。
でも、“笑えない人”なんてこの世にいるのだろうか。もし、いるのだとしたらなんて勿体ないんだろう。今度、彼女を笑わせてみようと決め、校門へと足を進めた。
~泣く少女1~
今日も朝日がまぶしい。朝露に濡れる木々と毎晩涙で枕を濡らす自分が重なって見えるから朝は嫌いだ、まあ、好きな時間帯なんてないのだが。そんなことを思いながらゆっくりと起き上がり、キッチンへと向かう。いつも通り自分でコーヒーを淹れ、そこら辺に置いてあるパンを頬張る。そして、いつも通り学校へと向かう。
憂鬱そうに俯きながら歩く、こうすれば誰も無理に挨拶してこないから楽、なはずだった。いつも笑顔で挨拶してくる彼が現れたせいだ。適当に頷いてやり過ごすけれど、そろそろ面倒で仕方がない。このまま一ヶ月経てば流石に挨拶してこないだろうか、でも彼は何があっても大体笑顔でいる、多分変わらず挨拶してくるだろう。泣いている所を人に見せないのは私が徹底していることでもあるから、泣いている所を見たことない人の方が多い、でも“泣かない人”なんてこの世にいるのだろうか。もし、いるのだとしたらなんて羨ましいんだろう。きっと悩みも何もなく、深く物事を考えることなく笑って生きているんだ。人を避けることも、家庭を恨むことも、笑うことが出来なくなることも、何も無い。私はそうなることが出来ないのに夢想する自分に嫌悪感と虚しさを感じまた目に涙を浮かべていた。“泣けない”ということもとても悲しいこととは気づかず、涙を浮かべているのがバレないように校門をくぐり抜けた。