動画投稿サイト
11話「動画投稿サイト」
放課後、
私はピザまんを食べながら神社の鳥居に寄りかかっていた。
降り続いていた雨はいつの間にかやんでいたが、厚い雲が空を覆っている。
「浮かない顔をしてますね。」
「そりゃね、思った以上の収穫も無かったし。」
何かあると睨んでいた地味女、二藤涼子も存外普通な女だった。
初の行動が失敗。
誰だってテンションが上がりはしない。
「二藤涼子、でしたか。彼女が思いの外普通だったんですね。」
「そーよ。スタイルがいいただの地味な女の子。それ以上の事は何もなかった。」
「振り出し、ですね。」
「・・・」
全くもってその通りだ。
またいちからやり直し。
ただでさえ学校は苦手なのに。
「・・・少しこちらに来てもらえますか?」
「え?」
シプレが口を開いた。
「こちらって、そっちの世界?」
「はい。」
「いやいや、パソコン家だし、ここ家までかなり距離あるし。」
「その事ならご心配なく。」
シプレが画面をスライドさせた。
すると数あるアプリのなかに一つ、見慣れないアプリがあった。
「昨日と今日でシステムを完成させました。このアプリがあれば、このスマートフォンからでもログインできます。」
・・・ほんと、とんでもないことを平然とやってのける。
私は回りに人がいないことを確認し、神社の裏に回った。
「・・・痛くないよね?」
「ご心配なく。キャリブレーションは済ませてあります。」
それを聞いてホッとしたよ。
私はアプリを立ち上げ、深呼吸した。
そして、画面をタップし決まり文句を一つ。
「コネクション!」
スマートフォンが発光し、やがて光が全身を包む。
やがて体が宙に浮き、重力の影響を受けなくなった。
××××××××××××××××××××××××××
「お疲れ様です。体に不具合はありませんか?」
前に来たときと変わらない、
四角いなにもない空間に彼女はいた。
「ええ、全く。ほんとにすごい技術。」
「おほめに預かり光栄です。」
白い空間に蒼い色がいっそう映えている。
相変わらず無表情だがそれでも可愛らしい。
「さて、早速ですが咲良さん、こちらを。」
彼女が指をならすとディスプレイが現れた。
そしてそのディスプレイを私の前までスライドさせた。
「これから咲良さんには、学校での情報収集に加えそちらの攻略も進めていただきます。」
「攻略って・・・」
彼女から提示されたものに写っていたそれは、
「動画投稿サイト、だよねこれ。」
国内でも最大の動画投稿サイトのトップページだった。
「はい。国内最大の動画投稿サイト、『リアリビティ』です。ご存じですか?」
「当たり前じゃない。国内で知らない人なんていないよ。」
『リアリビティ』
インターネットの普及と共に日本のユーザーの間で瞬く間に広がった動画投稿サイト。
今や、パソコン、スマホの普及率はリアリビティの普及率と言っても過言ではない。
「そのサイトで攻略って、ゲーム実況でもしろって言うの?」
「サイト『で』攻略、とは言っていません。私が言っているのはサイト『の』攻略です。」
「動画投稿サイトの攻略って、ハッキングでもしろっての?」
「・・・どうしてそんな野蛮な考え方しか出来ないのですか?」
悪かったわね、野蛮で。
でも他に何があるっていうの?
「単純明快です。動画投稿サイトで攻略と言ったらこれに限るでしょう。」
シプレが再び指をならすとリアリビティのユーザー登録画面にジャンプした。
・・・これで何となく察しはついた。
私が無理だというその前にシプレが喋りだしてしまった。
「学校での情報収集だけでは、どうしても集められる情報に偏りがあります。」
「ムリ!」
「ですので、これから咲良さんには、同時進行でリアルタイムのインターネット情報を集めてもらいます。」
「ムリよ!!」
「ですから最初は難易度の低いものからいきましょう。」
「ムリだって!!!」
私の拒否などシプレは一切聞く耳をもたなかった。
そういう子だ、彼女は。
「手始めに、このサイトの頂点を取りましょう。」