第十三章の1の3
目を覚ますと私は真っ白な部屋にポツンとあるベッドに寝かされていた。白い天井には蛍光灯のみ、壁も白く傷一つない綺麗な平面。視界から受ける刺激はあまりにも無機質で、気が狂いそうになる。
あれからどれくらいの時間がたったのだろうか。地面に押さえつけられてから記憶がない。颯太のことを想うと胸のあたりがざわつく。今すぐにでもベッドから飛び降りて颯太のもとへと駆けだしたい。
だが、私がいるところは普通の部屋ではないことは子供の私にも判断がつく。何もない空間に出口が一か所。しかもその出口は鉄鋼で重々しい扉ときた。勝手に出ることは不可能だ。管理しやすいように故意に作られた部屋。カメラ等は見られないが監視しているのは明らかだ。
そんなことを思いながら部屋をまじまじと眺めていたら扉が開き、白衣を着た男が3人ほど入ってきた。
最初に入ってきた男は咥えタバコ…ではなく棒付きの飴を口に含み、後ろをついてくる残り四人は7.9インチ程度の端末を忙しなく操作している、または分厚い資料を本当に読んでいるのか疑うほどの速さでめくっている。
だれがどういおうと最初に入ってきたキャンディーおじさんが3人のなかではトップ。
そして、颯太を実験室へ連れてきた男。この男の一存で連れてきたかどうかは分からない。だが、颯太の腕をつかみ拘束していた2人の職員へ何やら話しかけていた。
そんなことで首謀者と断言するのはどうかと思う。でも正直それはどうでもいい、颯太を危険なとこに連れてきたことに関わっていたことが許せない。
敵意をあからさまに向ける私など歯牙にもかけず、男は私に淡々と機械のように必要な項目を告げていく。
私が適合者になったこと
能力に関する説明
孤児院に戻ることができないこと
一般人として社会に出ることができないこと
そして、颯太のこと。
飢えた獣が目の前にぶら下げられた餌に飛びつくように私は食い入った。その男の口角が不気味に上がっていたことに気付いても飛びついた。
私の反応を見て男は最後の一押し、颯太との面会を提案してきた。颯太が心のよりどころになってしまっている私に選択肢はない。罠だとわかっていてもその提案に乗った。
男に連れられた場所は私が目覚めたときにいた所と同じ造りの部屋。どこも真っ白で殺風景な部屋。唯一違う場所といえば颯太が眠っているベッドの近くに盥いっぱいに入れられた水が3つ置かれていることだ。
男が言うには颯太は能力が暴走している状態で、目覚めると非常に危険。能力の暴走は眠っているときでも起こっており、手当たり次第に水を操作しているため、近くに盥を置くことで予期せぬ事態が起こる確率を下げているとのことだ。
この男のことは信用していない。だが、こんな嘘をつく理由は見当たらない。言われるまま盥の水を注意深く見ると水面がわずかに揺れている。不規則ではない3つともそろったもの。自然にできるとは思えない動きのため事実だろう。
私の様子を見てまた、男は話し出す。そして男の口から出た言葉は私を絶望させた。
「颯太を処分することになる。」
子供の私には重すぎる事実。現実と感じることができない。全身の力が抜け、体重を支えられなくなり地面に腰から落ちる。
怒りなんかも湧かない。颯太を何とかしたい、自分がどうなってもいいから颯太を殺されないようにしたい。そんな気持ちが先行した。
さらに男は続ける。
私に協力するなら颯太を助けてやる、と。
目の前にいる男は悪魔だ。だが、もう私に選択する余地はない。この悪魔の誘惑に勝てない。
その誘いを二つ返事で引き受けた。
次回は11/13に投稿します。
すっかり寒くなりましたね。風邪をひかないように気を付けてください。




