第十三章の1の2
職員に連れられ実験室へ着いたとき、私は取り乱した。施設に入所した初日に親に捨てられたことを聞いた時以来かもしれない。
私が平常でいられなかった理由は目の前にいる男の子だ。颯太年齢は私よりも下。
孤児院にいる私を含めた全員が別れによる心の傷のために関わりを持たない対策をしていた。だが、この目の前にいる少年はそうしなかった。
孤児院の状況を年齢から知らないためかもしれない。私を本当の姉のように慕ってくれていた。本当に小さな出来事、普通なら見逃すであろう事柄でも幸せを見つけ出し走って私に教えてきた。コンクリートで固められた地面の亀裂から黄色い花が咲いていたとか、雨上がりの空を見たら虹ができていたとか、本当に些細なことだ。
最初は少年の稀有な行動に戸惑った。他者に関心を持たず必要な時以外は話すことが無いのが当然の世界に生きていたのだから。だから、私は適当にあしらうようにしかしてなかった。だが、少年はそっけない私の反応にも満面の笑みが返ってくる。
何度も少年の相手をしているうちに私も弟に向けるような感情が芽生えていた。施設で感情のない生活を送っていた私にはそれが兄弟へ向ける情なのかは確かめる術はない。しかし、少年が嬉しい表情をすれば私も温かい気持ちになったし、少年が怪我をしたら自分のことのように焦りが起きた。
これが家族というものではないだろうか。もし家族というならば私の内から湧き出た感情は兄弟へのモノと呼べるはずだ。
私にいろんなものをくれた少年が目の前にいる。まだ、ここへ連れられるような年齢ではない少年がいる。
いやただの少年ならこんな気持ちにならなかったかもしれない。施設内で起きるただの出来事として終わったかもしれない。目の前にいる少年が颯太だから、私を姉のように想ってくれる颯太だから。
私は暴れた。自分でも驚くくらいに。少年の名前を叫び、私の肢体を取り押さえようとする職員を払いのけて少年に颯太に近づこうと何度も何度も。
そんなことをしても現状は変わるはずがないと頭では分かっていた。颯太を連れて逃げることなんか到底できない。だが頭より先に身体が動いたのだ。一度動いてしまえば止まることなんかできない。急な坂を転がるボールのように転がり続ける。
しかし、所詮は少女の力。職員が予想していなかった最初の抵抗で颯太へ大きく近づくことができたもののあと数歩進めばというところで取り押さえられ、地面に伏し薬品を打たれて私の意識は暗い海の底へと消えた。
休みが欲しい。
まとまった時間があれば書けるのに(パソコンだから、打てるのに、が正しいのかな?)
次回は11/6に投稿します。
短い文章につたない表現。
他の作者様と同じ土俵に立てない私ですが、これからも蚊取り線香をよろしくお願いいたします。




