第十二章の6
最近短いですね。すみません。
そしてなかなか話が進まない。
わがままではありますが、気長にお付き合いいただけると嬉しいです。
「ありがとうございます。」
足の痺れが治まり他のことへ気が回せるほどの余裕が出てきたころ。改めて掃除をしてくれた井端さんへお礼を言った。
お礼の返事は諦めを含めた溜息1つ。わざとらしいその溜息は俺への当てつけだ。普段なら聞き流せるものでも今回は散らかした上に片付けまで押し付けた。そのため痛み分けで終わるわけがなく、負い目を感じている。
せめてもの償いとしてお茶をグラスへ注ぎ一服するよう促すがそんなことで井端さんの気を治めることはできず、沈黙が続くばかり。
「今日はどのようなご用件でこちらに。」
場の空気を入れ替えるため話題を提案する。しかし、この狭い部屋を満たすプレッシャーは俺の許容範囲を超えているようで、意に関さず普段使わない話し方になる。
渾身の提案で流れを変えようとしたのだが、この手は悪いものだったらしい。わかりやすく言い直すなら地雷を踏んだ。どこ吹く風で通していた井端さんの表情が曇る。今までの表情から一変したのだ。鈍感な人でも気付く。
ここに器用な宮辺 宮成が居れば彼女へどのような言葉をかけるのだろうか。宮の性格だと無茶に事柄を聞き出すことはしないことは確実だが、その場合の対応の仕方は想像できない。
ざわつく心を無理やり押さえつけるしかできない自分が許せないが、何度も修羅場を潜り抜けた軍神ではない俺には他の方法が思いつかない。ここで無理に背伸びするのは悪手だ。
「私がここに来た理由は。」
井端さんが口を開いてくれたお陰で俺の心は少し軽くなる。だからと言って、質量によるものではない空気の重さは変わっていない。俺にできる返事は静かに頷くことだった。
彼女の口はとても重々しく、なかなか続きを発しない。静寂の訪れた部屋には時計の針の音だけが忙しなく駆け巡るだけ。
この間を切り開いたのは息。俺ではない井端さんが大きく息を吸い込んだのだ。その顔は何かを決意したよう。
「二式。いえ、陽野 二式さん。」
わざわざ言い直したのだ。相当の決意があったことが伝わる。
「私、井端 水無の過去をお話ししたいと思います。」




