第十二章の5
「じゃあ、そろそろ本題に入ろうかな。」
肌色の多い本を見つけようとする麗化を折り畳みのできるパイプ椅子へ座らせた。最初は抵抗し物色を続けようとしていたが睨みを利かせたところ、俺が本気になっていることに気付いたようで、本来の目的へ軌道修正するよう切り出してきた。
「どうして人探しをしていたのか。教えてもらおうじゃないか。」
「人を探す理由は第四課の調査です。」
「第四課の調査…」
第四課が俺の口から出たことに最初は面食らったように目を大きく向け、その後意を決した顔、そして一息入れてから俺の目をまっすぐ見つめた。
「それは公に口にしない方がいい。」
いつもより声が低い。真面目な話をするのだろう。
「この期間は国が主導だ。一般には国主導と聞くと安心するものだが、ここは違う。国の指示で動き、情報は外部へ流れない。国の好き勝手にできる。君が一歩踏み込んだ先は闇だ。」
俺が探している人、大丈夫か。俺が泊まっている部屋の前で話すぐらい口が軽いぞ。簡単にぼろが出そう。今頃ひっ捕らえられてもおかしくないのでは。
そうなると俺が探しているのも無駄な気がしてきたな。
「私から話すのも憚れるくらいだ。情報提供はあまり期待しないでくれ。」
いつの間にか期待の目をしていたようだ。あの二人がすでに捕まえられてしまった可能性が出てきたことで麗化が頼みの綱だったのは事実だが。
「つまり、麗化さんは第四課を知っているのですね。」
“話すのも憚れる”これは麗化が第四課を知っていることを認めていることになる。人へ教えるには情報を持っていなければできない。だから俺へ教えるくらい深い情報を持っていることになる。
「本当に君は察しがいい。そのくせ変に鈍感でもあるけどね。でも説明できない。自分の身が一番可愛いのが当然だろ。」
否定できない。誰も進んで死へ近づこうとは思わないだろう。
「そういう事だ。要は済んだしそろそろお暇させてもらおうかな。」
ここに来る目的は俺が人探しをしている理由だ。誰を探しているかは関係ない。しかし、普通は誰の方も気になるのでは。
「君の趣味にとやかく言うつもりはないけど。紐をほどいてくれないかな。」
実は椅子へ座らせるときに両手を椅子へ拘束していたのだ。
これは拘束しないとまた物色するかもしれないと思ったからで仕方なくしただけで趣味ではない。やむを得ずやったのだ。
「趣味ではないですよ。」
「でも慣れた手つきだったかな。」
手を椅子へ拘束するように結んだ紐をほどき解放する。自由を確かめるよう手首や肩を回す。
「人を縛るのは初めてですよ。」
「つまり、もので練習していると…」
まずい。墓穴を掘った。認めたことになってしまう。うかつだ。
「古雑誌や段ボールを捨てるときですよ。まとめるときに使うんです。」
言い訳にしか聞こえていない。引いているのが見て取れる。
「可愛い身を守る為に帰らせてもらおうかな。」
その言い方は自分が美少女であるとも取れますよ。
「これは独り言だけど。」
廊下へ出る直前思い出したかのようにつぶやく。
「第四課の中には終身刑や死刑、表に出られないわけありの人物がいるらしいかな。」
「それはどういう…」
「独り言といったはずだよ。」
麗化は言い残し去っていく。
残された俺ができるのは得られてヒントで考えるだけだった。




