第十二章の3
「なかなか出会うことができないな。」
俺は今食堂にいる。時間は7:30.朝食をとるにはちょうど良い頃か。
ちなみに俺は食事を終えている。6:30から張り込んでいるからだ。
この地下研究所は研究員の寮であり職場だ。人の生活は皆バラバラでいつ食べに来るのか予想できない。そのため食堂が開いている6:30から8:30の2時間、居座るしかない。
残り1時間かなり暇だ。周辺の会話に耳を澄ませ、たまに飲み物を取りに行くついでに、遠回りして自分が座っていた席から離れた人の声を聴く。ずっとこれの連続。そもそも食事中に話声を聴こうにも1人で食事をしている場合は一言も発さない。まぁ、誰もいない空間に話しかけているのを見るとそいつの頭を疑いたくなるのだが。
つまり、この散策方法はザルであるという事。
人探しの手掛かりが声しかない時点で困難極まりないのだが。第四課を探すヒントがこれしかないため、諦めることはできない。
「そろそろ野菜ジュースも飽きたな。」
ここには常時、麦茶、烏龍茶、緑茶の3種類がドリンクサーバーで並べられているが、朝限定で食堂の職員に声をかけることで裏から野菜ジュースが1リットルの紙パックが出され、それをグラスに移すことができる。
俺は栄養面を考えて普段から野菜ジュースを飲んでいたのだが、今日はこれで6杯飲んだ。1日分の野菜は摂取したと思える。もう十分だろう。
次は牛乳をおかわりして飲むか。だが、何度も飲むと腹が緩くなるかもしれない。なら茶を飲むか。
「そろそろ席を外してくれないかな。」
聴きなれた声。この声の持ち主は麗化。
「おはようございます。麗化さん。」
俺の挨拶を聞いていて思い出したように「おはよう。」と返し、続ける。
「何をしたいのか分からないけど、食べ終わったなら自室に戻ってほしいかな。」
「すみません。では、最後にお茶を1杯飲んで戻ります。」
限界か。当然といえば当然だ。今は食事時。食堂を利用する人が集中してくる。席取り合戦の最中だ。食べ終えた人がいつまでも席を陣取っていると邪魔になる。
「お願いするかな。で、何をしたいのか教えてくれないかな。」
気になるのは当然か。まてよ。最後に小声で“いつまでも居座って”と言わなかったか。
その言い方だと、俺が1時間座っていることを知っていたことになる。冒頭から見ていたのかは分からないが。
まぁ、それはいい。目的を麗化に教えていいものなのか。人探しで誤魔化すことは難しい。人を探す理由を追求されると結局は第四課を探っているとバレる。
そして、麗化を通じて依代さんに俺が第四課を調べていることが知られるかもしれない。
だが、ここで変に言い訳じみたことをするのも相手へ不振感を持たせる。正直に言うべきか。
「人探しをしていました。」
「人探し。」
やはり、疑問を持ったか。
「細かいことは麗華さんが食べ終わった後でいいですか。」
俺の提案に驚いたのか一瞬だけ目を大きく開き、そして何か察したのか、普段からは想像できない不敵な笑みを浮かべた。
「わかったかな。後で部屋へ行くかな。」
不要不急の外出は控えてくれという事か。
依代さんの耳に入ってほしくないこちらとしても俺の部屋で落ち合うのは有難いのだが。
「では、よろしくお願いします。」
おはようございます。
いつもお世話になっております。
次回の更新の件ですが用事が終わっておらず木曜の更新は怪しいです。
更新できるよう尽力しますが、ご容赦ください。




