第二章の5
「本日、二度目の商店街か。」
日本には二度ある事は三度あるという諺がある。この諺通りだと商店街にもう一度来ることになる。三度目が無い事を切に願うばかりだ。
商店街のゲートを横見しながらそんなことを考えていると、ある重大な事を思い出した。昼飯を冷菜と食べると井端さんに伝えていないことだ。既に料理し始めていると申し訳ないが、このまま連絡をせず料理自体を無駄にしてしまうと顔向けできない。さて、どこで連絡を入れるか。
「席が空いているか見てきます。」
冷菜が言葉を残し、ファミレスに先んじる。
いつの間にかファミレス近くについていたようだ。
店内では先に駆け足で入った冷菜が店員の相手をしている。この時間を利用して、ファミレスのトイレで井端さんに連絡をしておくか。
スマホのホームは12:00を指す。確実に昼飯を作っているだろう。これは由々しき事態だ。可及的速やかに連絡をとらねば。
スマホを操作し、井端 水無の名前をタップし電話をかけた。
暫しの沈黙が訪れる。スマホの向こうから聞こえる声は、怒りの声かはたまた癒しの声か。
「なんでしょう。」執行人の声だ。
「こんな時間に大変申し訳ないのですが。家に帰る途中で同級生に会いまして、一緒に昼食をとることになりました。」自分でも声を聞いてわかる。俺はかなり怯えてる。
「そうですか。では今テーブルに並べてる料理は無駄だになりますね。」怖い怖い怖い。滅多打ちにされる。この低いトーンかなり怖い。
普段の落ち着いた話し方がそれに拍車をかけ、脅迫されているのではないかと錯覚する。
「夕ご飯として、後で美味しく頂きますので、此処はどうか。」これが懇願というものか。心からの願いの内容が昼食になるとは夢にも思わなかった。
「分かりました。夕ご飯として置いておくので、絶対残さないでくださいね。」
許しが出た。勝った…。俺は勝ったんだ。勝利を勝ち取ったんだ。あれ、おかしいな。目から水が流れてきた。ただ、昼食を冷菜と一緒にとることを報告しただけなのに。
「あ、此処からは独り言なので聞き流してもらって構わないのですが。今、無性にショートケーキが食べたいですね。」「はい、喜んで買わせていただきます。」
料理を無駄にしたことは、タダでは許されないようだ。




