第十二章の2
シカ「第四課」剛田剛はそう言っていた。
第四課とは何か。実態が知りたい。どことなくきな臭いのだ。
だが、誰に聞けばよい。依代さんは論外だ。地下研究所のトップ、施設内のことならば誰よりも深く知っているだろう。それこそ裏のことまで。
しかし、俺の部屋の前で話していた女性職員の内容を思い出してほしい。ある職員が「依代さんに歯向かった」といったのだ。ならばこの第四課は依り代さんの一存で誰でも配属させることができる部署で「歯向かう」と送り込まれる場所。いわゆるブタ箱ではないか。
こんなの聞けるわけがない。
依代さんの主導で機能している第四課を指差して“これはどのような課ですか”と質問してみろ。ブタ箱なんて言うはずがない。表の役割しか言わないはずだ。
では、どのようにして聞き出すか。思いつくのは部屋の前で話をしていた女性職員二人。しかし、問題が一つある。声は覚えているが顔は知らない。何しろドア越しで聴いただけだ。顔なんか見えるわけがない。
そこで片っ端から女性に声をかけて探すとしても規模が大きすぎる。そうでなくても研究員の女性に漏れなく声を駆けるという奇行をする男子高校生は目立つのだ。すぐに依代さんの目に留まる。
唯一顔がわかる研究員の宮辺さんが第四課へ送られたのは痛手だ。
前回の面談の様子から剛田から聞き出すことも望み薄だろう。
「手詰まりだな。」
「諦めるのはまだ早いかな。」
「麗化さん。どうして二枚落ちで勝てるんですか。」
「それは飛車と角行なしでも勝てるほどの棋力差があるからかな。」
「それは事実ですが今は答えになっていませんよ。」
そう。今、麗化としているのは将棋だ。剛田との面談が終わり、部屋へ戻ろうとしたのだが、少し腹が空いたため食堂へ引き返したのだ。すると何やら一か所でたむろする集団が。そこではある者は頭を抱えて叫び、ある者は歓声を上げて拍手する。また勝負で勝利するものを予想し賭けていたのか負けている方を奮い立たせようと必死になる者もいた。
「将棋が得意だとは想像もしていませんでした。」
将棋のルール自体は知っているが指した経験は少ない俺でも飛車と角行の二枚を無くした状態では、さすがに勝てると踏んでいたのだが。
「世渡り上手な麗化様の名前は伊達じゃないかな。」
俺の発言に気を良くしたのか突然得意げな顔になり、慎ましやかな胸を張って言った。
「そんな二つ名初めて聞きましたよ。」
「ゴルフ、ワールドカップ…」
「わかりました。俺の視野が狭かったのですね。」
死んだ目でぼやく麗化の姿で社会人の闇を垣間見た気がする。
おそらく麗化の上司に将棋をする人がいるのだろう。そしてその人に合わせるために覚えた、と。
キャリアウーマンの麗華さん、お疲れ様です。
次回は9/25日です




