第十二章の1
今週から忙しくなります。
火曜のみの更新にさせてください。
申し訳ありません。
「そしたら急に怒りが抑えきれなくなって。」
高ぶった感情を抑えるためか握った右手をベッドのマットに振り下ろす。
彼の拳でたたかれたマットは壊れることもなく受け止める。
剛田剛、自身の能力に魅せられ暴れた男。
その男は今8畳ほどの部屋で収容されている。この部屋にはベッド、トイレと洗面台それ以外はない。本当に収容することだけの部屋なのだろう。
床はコンクリート、壁は鉄板。脱出を試みたのか殴った後がある。しかし、凹みは浅く、脱出するには何度も繰り返し同じところを殴らなければならないだろう。そのころには取り押さえられているだろうが。
「学校を潰すつもりもなかったんだ。すべてはあいつ、帯刀と話してからだ。」
冷菜の能力の話を聞いた翌日。依代さんから、剛田との面会をするよう求められ、今に至る。彼はベッドで上半身だけを起こし、俺はベッドの左脇で面会の時だけ持ち込まれるのであろう折り畳み式のパイプ椅子で座っている。
この剛田の話を聞く限りでは、彼は初めに捕まった件で十分に反省し以降は、暴動を起こすつもりはなかったらしい。
自身の能力に浮かれた事、腕をガラスに突っ込ませた切っ掛けを作った俺への怒りを認めたうえでだ。
前者は自身よりも優れた能力をこの地下研究室で見た事で、後者は学校で俺に細かな嫌がらせをすることで収めようとしていたらしい。
俺への嫌がらせは迷惑千万だが、対処の仕方は人それぞれ方法があるため剛田の言い分は納得できないわけではない。
そのような生活を送ろうと決め学校生活を送ろうとした矢先、帯刀先生に呼び出され図書室でいろいろ話をしたらしい。すると突然俺への怒りがぶり返し、抑えきれなくなり、あれよあれよとあの惨状へ。
「二式。あいつはヤバイ。よくわからないが兎に角ヤベー。深くかかわらない方がいい。」
あいつとは帯刀先生のことだろう。
「そんなにヤバイのか。」
ヤバイという言葉は意味が大きすぎる。気を付ける必要があることはなんとなく伝わるが、具体的にどういった部分を気にしておけばよいのかはわからない。
「話をするだけで感情を抑えきれなくなったんだぞ。」
それはお前の理性が弱かっただけではないか。俺への怒りが戻ったのは話をする過程で想起したからで、感情任せになったのは剛田の性格で元から衝動を抑えるのが苦手な可能性がある。
判断するには情報が少なすぎる。即断即決は時には必要だ。しかし、情報が不足した状態で行うとリスクが高い。今回は現状維持をするだけならそのリスク負うことはないのだ。
ヤバイと判断するに事足りる情報があればするだけでいい。
「害を与えた俺じゃあ信用がないのはわかるが、あいつらを過信しない方がいい。」
多少はまともな判断できるのか。
「まぁ、気を付けるよ。」
そう言い残し、俺は席を立って部屋を出ようとする。
「待てよ。」
呼び止められても止まるつもりはなかったが、人は社会生活の経験から反射的に足を止めてしまうようだな。
「一発殴られてから部屋を出てくれないか。」
その提案に乗ると能力任せに殴りつけて顔を吹き飛ばされて死んでしまうのでは。
「遠慮したい。」俺はまだ生きたいので。
「能力は使わない。だからホントだ。」
「なぜそこまで。」
「俺は今回の件でシカ、研究所第四課に配属されることになった。外へ出ることができなくなる。その前にけじめを付けたい。」
こいつ「けじめを付ける」の意味を調べた方が良いのではないか。それよりも「けじめを付け方」のほうか。
いやいやそんなことより。
「今シカと言わなかったか。」
「面会の時間は終わりです。退室願います。」
まるで見計らったようなタイミング。
「気になることがあるので、それを聞くだけの時間は」
「ありません。」
質問を打ち切るように言ってくる。これは無理だな。交渉の余地がない。出ることにしよう。
次回は9/18です。




