第十一章の8
これは
「隔離。」
八畳ぐらいの部屋で真っ白な天井に壁、そして床。白、白、白。おまけに部屋にはベッドのみ。気がおかしくなってもおかしくない。
「わるいね。せっかくの再開なのに直接顔を合わせることができなくて。」
鏡越しで部屋をのぞくだけ、まるで虫の観察のようだ。俺の視線を冷菜は気付いていないのだろうか。ただ周辺を見渡し、自らの置かれている状況をつかもうとしている。
「依代さん。冷菜は俺たちが見えないのでしょか。」
「あぁ、この部屋と診療室を阻むこのガラスはマジックミラーになっているんだ。」
だからか。冷菜が俺をまったく気にしないのではなく、冷菜は俺に気付いていないのか。
「依代さん。どうして、面会できないのでしょうか。」
「霜月さんが目を覚ましたという事は、能力者になったといえる。どのような能力を得ているのかわからない状態で面会をすると。」
危険か。しかし、それだと疑問が出る。
「俺の時は自分の部屋でしたよ。」
「その時は、周辺にリストを配置し、臨時で警戒態勢にあったからね。」
それであったとしても、冷菜と俺を比べても扱いの差が激しく違和感が消えない。
俺が目覚めたときは、井端さんとすぐ話をしていた。つまり今俺が面会していない事と矛盾している。
俺と冷菜、何か違いがあるのだろうか。同じであるなら現状と扱いは変わらない。警戒態勢であっても能力により怪我人が出ないようにするため、人との接触は避けるだろう。
「何か気になることでもあった。」
考え込んでいる俺が気になったのか、依代さんが一言入れてくる。
「いえ、なにも。」
俺にはわからない科学的な理由があるのかもしれないな。
それよりも、今は冷菜が回復したことを素直に喜ぼう。
冷菜は部屋をくまなく見まわることで、自身の置かれた状況を理解したのかベッドの淵へ座り、マジックテープで前を閉じる形式の病衣に手をかけ引っ張る。ゆっくりと絹のような柔肌が次第に現れ…
「ちょ、依代さん。止めてください。」
依代さんもこの状況は予想外だったようで、少し慌てた様子。
「そうだね。女性研究員に言ってくるよ。」
そういって車椅子のタイヤに手をかけ180度方向転換。背面の自動ドアへ向かう。
対して、俺は回れ右をして天井を見るしかできなかった。
状況が状況なだけで故意ではなかったものの見てしまったことに罪悪感がある。
依代さんは女性研究員を呼びに行ったが、何とかなっただろうか。服を着せてくれたのだろうか。これはあくまで気になるから、現実確認のためであって下心はない。
後ろを振り向くのは確認だ。少し振り向くだけ。
天井から左後方へゆっくりと目を移してマジックミラーへ。鈍い音を立てて、ひび割れ始めているマジックミラーへ。
ひび割れ…おかしい。
そんなこと起こるか。それにこの音、暴風が窓を荒く叩いているよう。いつ割れてもおかしくない音、これが不安をあおってくる。
「逃げよう。」刹那。耳を突くような音とともにガラスが向かってくる。
「すごい音がしたけど。二式君大丈夫。」
心配になってきてくれ来てくさったところ悪いのですが、タイヤがパンクするので来ない方がいいですよ。




