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第十章の12
「精が出るね。」
ランニングマシンから降り、声のする方へ眼をやる。
「ここではこれ以外にすることが無いですからね。」
嘘だ。俺はただ逃げているだけ。現実を忘れたいだけ。
「依代さん。冷菜の様子はどうですか。」
冷菜が眠ってから今日で3日目。
「身体は何も変化はないね。健康そのものだよ。」
身体はという事は目覚めてはいない。
俺はどうして止めなかったのだろうか。
あの時、冷菜を引き留めていればこのような気持ちになることはなかったのに。
「自分を責めるのは良くないよ。」
顔に出ていたのか、哀れみのある笑顔で慰めの言葉がかかる。
「反省は未来を変える一歩。自責は過去を見ているだけ。反省であればいくらでもしていい。でも、過去に戻るだけでは何も変化しないし、何も生まれない。」
何か思うことがあるのか、依代さんの言葉には重みがある。
「少し昔ばなしでもしようか。ここではなんだし、僕の部屋でコーヒーを飲みながらさ。」
次回は6月25日です。
来週には通常通り火曜と木曜の更新に戻せそうです。
今後ともどうぞよろしくお願いします。




