第十章の8
「さて、気を取り直して始めようか。」
場面変わってここはだだっ広い空間。能力の使い方を教えてくれた場所。
「給料減らされたことを知って、そのテンション。尊敬しますよ。」
「まいったね。これから先どう食いつないでいくかわからないよ。」
これ、空元気というやつだ。
事実としては笑っているが、おそらく心では泣いているのだろう。
「身から出た錆、お酒に飲まれた俺が悪い。」
「これから気を付けてくださいね。」
本当はここで慰めの言葉をかけるべきなのだろう。しかし、環さんが絡む姿を想像して不快な感情を抱いてしまった俺が慰めてよいものか。
「でも。いくら嘆いても過去に戻ることはできない。今、自分にできることをするだけ。」
この人の気持ちの浮き沈みが激しいな。
背中を丸めて下を向いたかと思えばいきなり声を張り上げてガッツポーズ。
「成果を出せば、また給料を戻してくれるかもしれないからね。」
「それが狙いかよ。」
今までの俺の気持ちを返せよ。
「さて、二式君。俺の給料を少しでも早く元に戻すために頑張ろう。」
「環さん。」
俺を誘う環さんの掛け声に乗るように、俺は元気よく環さんの名前を呼び、注意を引く。
そして、耳を傾けたことを確認したあと、精一杯の笑顔で俺は彼にこう告げた。
「果てしなくやる気が起きません。」
次回は5月29日です




