第十章の6
「この動画を見てどう思った。」
動画の内容は剛田との争い、動画の長さは40分程度。
「どうといわれましても。俺には何とも。」
「この前に、走っていたはずかな。」
「さすが麗化さん。よくそこに気付いたね。」
走っていいた、とは、どういう事か。
「今見せた映像は部活棟裏での争いだけ。でもね、この前に約15分走っていた。」
そうか。わかったぞ。部活棟裏で争っていた俺は息が上がっていない。15分も走っていたのに。
「二式君の体力はそこまでなかったはず。なのに。」
「疲れがまるで見えない。」
「気付いたようだね、二式君。」
「しかも普通に走っているだけではないかな。」
その通りだ。あの時、俺は後ろを確認しながら走っていた。理由は簡単、剛田が物を投げてくるからだ。
能力者が投げてくるのだから一般の人が物を投げる場合と比べると速度も威力も尋常ではない。それらを避け、また投げてこないか確認しながら人のいないところを通って部活棟裏来たのだ。
「断定はできないけど、何かしらの能力が働いている可能性はある。」
この人は逃げ道を作るのが上手だな。断定はできない、と前置きするところ。
「では、断言するには何が必要なのですか。」
「それは情報だよ。情報があれば裏付けができる。根拠のない意見は信頼されないからね。」
「情報の入手するあてはあるのですか。」
「よくぞ聞いてくれた。二式君。」
選択肢を失敗したかもしれないな。ふと思ったことを質問しただけなのだが、ここぞとばかりに目を輝かせ詰め寄ってくる。実際は部屋が狭いうえに車いす、身体を寄せることはできず、依代さんが前かがみになっただけなのだが。
「実験だよ。実験が一番簡単に情報を手に入ることができるんだ。しかも、実験は自分の好きなように環境を作り出せる。環境が作り出せるという事は…」
これ、永遠に語り続けられるパターンだ。こういうところを見ると、依代さんの本業を思い出させられるな。
「で、実験はどこでするのかな。」
気持ちよく1人で話し続けていた依代さんに横槍を入れたのはもちろん麗化だ。
「実験する場所、ね。それはもちろん、環君のとこだよ。」
あの広すぎるところか。
「今から行くのですか。」
「それは無理だよ。二式君。」
無理、ね。前回は思い立ったが吉日とか言ってませんでしたか。
「観測するものとかの準備を考えると、明日だね。明日の朝には迎えを出すから楽しみにしてね。」
迎え。この言葉は果てしなく不安だな。




