第十章の5
「これは傑作だね。」
大きな声で笑うのは依代さんだ。そしてここは遠山高校の地下、倉庫等があるところ。校舎では剛田の一件があったのだが地下への入り口が塞ぐようなことはなかったようだ。しかし、昨日の一件から地下に通じる入り口が1か所しかない状態は良い事ではないとのことで非常口を造る予定らしい。
「笑い事じゃないですよ。ボイスレコーダーが常備されていること知って、ストレスフルな生活ですよ。」
俺が発した言葉がいつどこで録音されているのかわからない状態だ。悪口は基本言わないのだが、どれほど気を付けても愚痴は出てしまうことがある。これを録音して、脅しに使われるかもしれない。
「私にへこへこしながら生きていく人生もいい事かな。」
「高校生で胡麻をすって生きていく。世渡り上手になるね。未来は明るい。」
麗化のご機嫌取りの高校生活かよ。
「冗談がきついですよ。依代さん。」
「まぁ、それはそれとして。今日、呼んだのは君のもう一つの能力について話したかったんだ。」
依代さんはひとしきり笑い終えてから、真面目な顔に急変し、今日の要件を打ち出した。能力の話と聞き、俺と麗化も表情が消え、ボイスレコーダーの話で笑い声が絶えなかった部屋の空気が一変。非常に重く、静か、今まで気にもしなかった事務机に置かれている時計の秒針の音が響く。
「俺のもう一つの能力についてですか。」
「うん。正直わからないことが多くて、確信している、とまではいかないけどね。」
「確信がない、ですか。」
「目の色が変わっていないのが痛いね。」
確かにそうだ。変色があると能力の候補が一気に絞り込める。
「何か進展がなかったら私たちをここに呼ばないかな。」
尻込みする依代さんにしびれを切らしたのか。
「そうだけど、ね。」
「じれったいかな。」
これはかなり苛立っているな。いつの間にか麗化は右腕を下に左腕を上にして腕を組んでいたのだが、左の二の腕に乗せられた右手の人差し指が激しく上下している。
「説明するから、落ち着いて。」
麗化の言動にさすがに焦ったようだな。
「でも説明する前にあれを見てもらった方が、いいか。」
前言撤回、早いな。意見が二転三転させるのは相手の神経を逆撫でしますよ。
「これ昨日の映像なんだけど、見てもらっていいかな。」




