第九章の7
「で、先生から呼ばれたと。」
「はい。」
「ひーくん、私を馬鹿にしてない。」
「してないです。」
朝、普段なら目覚ましの音で目が覚めるのだが、今日は絶え間なくなる呼びベルに起こされたのだ。
「ひーくん、聞いてる。」
「しっかりと聞いております。」
ちょっと考え事をするとこうなる。
俺の前には目玉焼きが乗った食パン一斤。そして対面するように座っている冷菜も同じものだ。
「冷菜さん、あのですね。先生から呼ばれた理由を聞くために早くから来る必要あったのでしょうか。」
「逃げる可能性があるからです。」
紺色のメガネをかけ、ブリッジを中指で少し上げ、得意げに理由を説明する冷菜。どこからその眼鏡を出したのか。
「ひーくんのメガネ。度が全く入ってない。」
見たことあると思えば。
「このメガネ、ファッション用かな。いくら着飾っても性格を磨かないと女性に好意を持たれないよ。」
「昨日帰ったのが遅くて片付けなかっただけで、いつもは綺麗ですよ。」
床には、ベランダから取り込んだ後だ、と言わんばかりの折りたたまれていない洗濯物。シンクには洗われていないお皿。
「面倒なのはわかる。でもちゃんとして。」
「以後、気を付けます。」
散らかっている実際の理由は帰りの時間じゃない。食事後にベッドに寝転がりながら依代さんの言った言葉について考えていたらそのまま寝ていたのだ。
依代さんが言うに、俺にはもう一つ超能力を持っている可能性があるそうだ。その根拠は薬を2回打っていることだ。
「それと、偏った食生活も直して。」
「はい。わかりました。」
母親から叱られている気分だな。そのつもりがないのに、ですます調になる。
「冷蔵庫に食材が全くない。今日、学校の帰りに買い行こう。」
「いやいや、自分で行くから。」
「行く。」
「はい。」
監視のためか。俺の性格を本当にわかってらっしゃる。




