第九章の6
「誠に勝手ながら二式君の成績を見せてもらったけど、目を見張るものはなかったよね。」
依代さん、人の成績を本人の了承なしに覗いて、その本人へ成績が良くない、と言うのはどうかと思いますよ。
「体育も人並み。とてもこのような動きができるようには思えないんだよね。」
「俺にはよくわかりませんが、火事場の馬鹿力、というものではないですか。」
「それを言われると何とも言えないのだけどね。」
痛いところを突いたようで、依代さんは苦笑いをした。
「しかし、これだけの動きを火事場の馬鹿力だけで説明するのはできないかな。」
麗化まで。
「そうなんだよ。環君には能力の使い方を教えてもらっただけだし。麗化さんは何か思い当たることはある。」
「ないかな。」
「麗化さん、もうちょっと考えてくれませんか。」
依代さん。お願いをするのに、下手に出るのは重要だと思います。思いますが、麗化に対しては逆効果だと思いますよ。
「そんなに私の力が必要なのかな。」
ほら、調子に乗る。気分が良くなった麗化は、仕方ないな、前置きをした後に。
「私が思うに観察の能力がこの動きを可能にしたと思うかな。」
「なるほど。具体的にはどのように働いたのかな。」
「能力で相手の動きを数ミリ単位で観察してそれに合わせて効果的なタイミングを計って動いたのかな。」
「確かにそうだね。でも、それだとタイミングだけで動きの良さは説明できないような気がするよ。」
依代さんの言うとおりだ。タイミングを計れたとしても身体がついてくるのか。
「それこそ、火事場の馬鹿力で。」
「麗化さん。僕はそれで説明できないから困っているんだよ。」
あの麗化が追い詰められている。これは珍しい。
「もうそれ以外は、秘めた力が目覚めたとかいうファンタジーみたいなものしか。」
「そんな夢物語、現実に起こるのかな。」
そうなるよな。麗化の言うようなことは現実的ではない。
「いや、あり得るかも。」
「学、それはどういう意味かな。」




