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泡沫の夢、幻の未来  作者: 蚊取り線香
第二章
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第二章の1

……さい……さい……ください……起きてください。


「起きてください。」


「痛っ。」


「今朝の目覚めはどうですか?て、聞くまでもないですね。朝から元気よく動いていますし、気持ちよく起きれたようですね。」


「どこをどう見たら気持ちよく起きれたと判断できる。むしろ最悪の起床だ。」


「布団を引っ張った時の勢いにつられニ式さんが布団から落ち、小規模なバンジーしたところです。」


「それのどこが気持ちいい朝だ!」


「小規模バンジーをした後たくさん動いてましたよ?」


「それは激痛によって悶えていただけだ。」


「そうなんですね。では、ご飯が出来てますので早く食べましょう。」


「謝罪なしかよ。」


「朝から大きな声を出し、機敏な動きもしていました。それは私の起こし方が正しかった証拠ですよ。」


本当に最悪な朝だ。一旦トイレに行って落ち着こう。


「 で…お前はなにしている」


トイレからでると、リスのように食べ物で頬を膨らませた麗化がいた。


「見て分からないかな?」それくらいわかるよ。パンを食ってるんだろ。

こいつは俺をノイローゼにでもさせるつもりなのか。


「俺の言葉が悪かったな。もう一度訊こう。お前は何故ここにいる?」


「朝食を摂りにきているんじゃないかな?」


分かった。こいつは俺を困らせ、軽い鬱状態に持って行き、ストレスで胃に穴を開けようとしてるのだな。

そうと分かれば、俺はこいつと話さない。どうせ、大した意味もなく、暇だから来たのだろう。


「聞くところによると、明日から学校へ行くそうじゃないかな。」気乗りしない内容を出してきた。理由は簡単、井端さんが発したあの一言だ。


「ちょっとした連休は楽しかったかな?」


麗化はあの一件を知っているか不敵に笑う。俺は焦りを隠すかの様にコップに入った牛乳を口に運ぶ。


「休みのほとんど、水無といたそうじゃないか。」


それは違うな。井端さんに監視されて過ごしていた。が、正しい。彼女自身、俺を監視する役割を担っていると言っていた。

だが、こいつの言い方だとそれは違うのかもしれないが。


「無視はやめてく……私で破廉恥な想像をするのをやめてくれないかな?」悪戯めいた声で言った。


「してません。」声が上ずった。


「慌てた反応がまた怪しいかな。」


やはり攻めてきた。裏返った自分の声を聞いた時に気付いたが、遅かったようだ。麗化の黄色い目は既に、新しいおもちゃを見つけたような無邪気な目に変わっている。


「若い二人、日夜問わず共に過ごすとなると様々な事が起こるでしょう。」


「目が覚めると炊事をしているエプロン姿の井端が目に入り、井端が作った料理を食べ、井端に見送られながら出かける。」


井端さんを強調しているのは、故意なのだろうか。


「仕事を終え家に帰るとまたもエプロンに出迎えられ質問をされる。"あなた、ご飯にする?お風呂にする?それとも、た・わ・し?"」


「なぜ束子。」そこは、オーソドックスにわたしでいいだろ。


「間違えたかな。」冗談めかした声だ。


「言い直そうかな。"あなた、毒にする?溺れる?それとも、お・う・だ?"」


「もしもし、警察の方ですか?」「やめてくれないかな。」スマホを耳に当てた俺を見た麗化が声を大にして止めに来た。


「どうしてそんな事するかな。」


「殺害予告してきたんだ。連絡して当然だろ。」俺は耳から離したスマホを右手で遊びながら答える。


「兎にも角にも、楽しかったのかな。水無との駆け落ちは。」言い捨ててきた。

意表を突かれた俺は言葉に詰まり、それ誤魔化すためコップを口元に近づけた。


「水無との駆け落ちは楽しかったかな?」ここぞとばかりに麗化は攻めてくる。


やはり知っていたか。この話を持ってきた時には既に予想していた。

だが、実際にこの状況に置かれると、俺の脳がフリーズし、どう答えるべきなのかわからない。ただグラスを口につけたまま呆然とするだけだった。


「もうなにを言っているんですか?」


参っている俺を見かねたのか、洗濯物を干していた井端さんが、いや天使が助けにきた。


「二式さんとの駆け落ち、楽しかったに決まってるじゃないですか。」


この世界に仲間はいないのですね。渡る世間に鬼はなし、ということわざはどこに行ったのでしょう。

私は悲劇のヒロインの様に地面に倒れ伏し涙を流せばいいのでしょうか。


「気持ち悪いから絶対にしないで欲しいかな。」


「えっ」俺は慌てて口を塞いだ。


「聴こえてた?いや口に出てた?」


「えぇ、まるで蛇口を捻ったように心の声が口から溢れてました。」


井端さんは笑顔であったが、青い目は笑っていない。むしろ軽蔑の入った目だ。


二人からの目による攻撃を受けた俺は、赤面し叫ぶしかなかった。「殺してくれ」と。

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