第九章の5
「この映像を見てどう思った。」
タブレット端末で見せられた映像は颯太との奮闘であった。
「これは学が撮ったのかな。」
「上から送られてきたファイルだよ。」
映像から見て撮影場所は麗化のいた場所と反対側、麗化が知らないのも当然か。
「上、ね。撮影する暇があるなら手伝ってほしかったかな。」
「その要望の応え、経験則からわかるよね。」
「絶対に応援はないと。」
逮捕協力を願うトップは安全な場所で見物か。司令塔がなくなると組織全体が崩れるという理由でなら理解できる。しかし、2人の表情からそのような理由ではないか。
「そういうこと。現場の苦しさ嘆くのは後にして、この映像の感想を言ってくれないかな。」
そういうと依代さんは手元のタブレット端末を操作し、もう1度動画を再生させ、俺たちに見えるよう机の上で立てかける。
「水龍で見えなかった部分が見られてよかったかな。」
水龍の身体は相当な大きさがあった。麗化の視界を遮ることが多かっただろう。
「後は二式の動きが常人離れしていること。」
普段と声の質が違う。
「さすがに気付くよね。この時の動きは明らかに違う。」
2人の表情は消え、真剣な目で動画をにらみつける。
倉庫からの冷気とは違う。2人から作られた雰囲気だ。
「それほど俺の動きはおかしいものですか。」
この空気に耐えられなくなった俺は意識に反し質問してしまった。
「動きの1つ1つは、人間離れしたものではないんだけどね。」
俺の質問に答えてくれたのは依代さんだ。しかし、意識は動画の方にあるようで、身体こそ俺に向けてくれるものの、目線は完全にタブレットだ。
「その場に応じた動き、避けるときの正確すぎるタイミング。これを総括してみるとプログラミングされた機械に思えてくるんだよ。」
依代さん。それ、結局は人間離れしていることにならないですか。




