第九章の4
「やあ、二式君。」
「こんにちは。」
麗化に連れられ職員室の一角で隠れるように設置されていたエレベーターで地下1階。扉の先には薄暗くコンクリートがむき出しの部屋。空調設備によって快適だった職員室とは反対に肌寒い。室内には大容量のラックが所狭しと設置され物品が整理されている。
肌寒く湿気の少ない環境、倉庫にはこの上ない空間だ。このだだっ広さとラックの数、すべて埋まることはあるのだろうか。
「それにしても依代さん、学校に地下室があるとは知りませんでした。」
「知らなくて当然だよ、最近完成したところだから。立ち話もなんだし、コーヒーを飲みながら話そうか。」
そういうと、依代さんは足に乗せていた段ボールを高低差のない段に置き、俺と麗化を案内する。
エレベーターの扉を背後に右手後方、そこには簡素であるが部屋が作られていた。
倉庫に隣する壁はとても薄く、冷気がほのかに入ってくる。部屋の広さも必要最低限のようで、机と腰程度の高さの引き戸タイプの書庫を隣接するように置くだけでいっぱいいっぱいのようだ。
「インスタントでいいよね。」
書庫の上に木製の長方形トレーがあり、そこにコーヒーカップ4つとタンブラーグラス1つ。タンブラーグラスにはステックタイプのコーヒー粉末とシュガーが入れられている。そしてトレーの隣には給湯器。
「椅子は変わらずのパイプ椅子ですね。」
書庫と壁の隙間に詰め込まれた2脚の折り畳み式パイプ椅子を見ながら言う。
「それが一番便利なんだよ。今は開かないでね。通れなくなるから。」
「わかりました。」
依代さんは車椅子だ。これ程狭い部屋でパイプ椅子を開くと移動が不可能となる。
「学、紅茶はないのかな。」
「麗化さん、僕はコーヒーを飲みながら、と言ったはずだよ。」
「仕方ないな。これからは紅茶も準備してほしいかな。」
「飲まないものは買いたくないな。」
「買ってほしいかな。」
「わかったよ。」
麗化よ、依代さんをあまり困らせるのではないぞ。
「楽しみにしているかな。」
「さて、コーヒーもできたし、本題に入ろうか。」




