第九章の2
「やあ、最近早いね。」
靴箱へ下靴を置いているところを右側から声を変えられた。
「早めの登校をしてはいけないと校則にないだろ。」
眠気からあくびをしながら登校する人や通勤ラッシュからか暗く淀んだ目をしている人、朝から威勢の良い挨拶を交わす人、各々違った朝を迎えている中、朝のニュースを読み上げるアナウンサーのような爽やかな声と笑顔をする人がいる。宮だ。
「その通りだね。」
俺の皮肉めいた言葉を受け、自慢の笑顔が少しゆがむ。
「そういえば今朝のニュースを見たか。商店街の。」
申し訳ないな、強く当たってしまって。俺の心は今複雑怪奇。ちょっとしたことでも荒れる。そして一番被害を受けるのは心を許している相手だ。
「水道管の老朽化のことだね。」
空気が重くなるのを避けるためにした突発的な話題の変更だったが、成功したようだ。
「最近老朽化という言葉をよく耳にするよ。」
どうやら能力者が起因で起こる事件はすべて施設等の老朽化として処理し、情報を隠しているらしい。
今朝に放送されたニュースの内容は、高度経済成長時代の大規模な水道管配備が原因で交換しなければならない水道管が同時期に集中していることであった。
おそらくこの言い訳は諸刃の剣だろう。なぜなら、多くの人はこのニュースを聞いて、前もって水道管の交換を段階的にしておかなかったのか、と疑問を持つからだ。
これでは、政府の管理能力が問われることになる。同時期に配管工事をすれば、また同時期に交換することになる、という誰もが思いつくことに気付くことができなかったからだ。だが、政府の狙いである能力者の隠ぺいは可能。公共のものであれば処理も自身で行うことができるため、言い訳としては便利だ。
「そういや、バイト先は大丈夫だったか。」
宮のバイト先であるナカガイは商店街の中通りだからな。形式上心配しておかないと。
「客足が目に見えて減っているのと、店長の仕入れミスで膨大な在庫が発生したことが重なったことが被害だね。水は別のところから引いているのか、使えるよ。」
「中通りは片方の道がふさがると、途端にアクセスが悪くなるからな。」店長のミスは知らん。
「中通りは中間に位置しているから、程よくお客さまが来てくれるんだけどね。どこかの道が使えなくなると大回りいなくちゃいけない。そして、その被害者のうちの一人が僕。」
「それはご苦労なことで。」
「他人事だね。」
「事実だしな。」




