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泡沫の夢、幻の未来  作者: 蚊取り線香
第八章
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第八章の8

「邪魔するかな。」


スーツ姿の麗化はノックもなしに入ってくる。


「目を覚ましたのかな。」


いつも思う。この人はタイミングが悪い。ある意味では良いのかもしれないが。

今の俺は目が赤くはれ、服の袖も濡れに濡れている。


死の恐怖を肌で感じた後だ。生きていることに喜び涙するのは仕方のないこと。しかし、この人はそれで納得してくれるのだろうか。たまきさんの腹に着地する人だぞ。


「あの時はすまなかったかな。」


意外な言葉だ。俺の予想は外れたのか。


「あの時とはどの時のことでしょうか。」


麗化からの謝辞しゃじ。思い当たることは1,2,3…結構あるぞ。これでは絞り切れない。迷惑な行動を検索対象から外して、実際に被害を被った行動だけにしよう。


「昨日のことかな。」


「昨日ですか。」


最初から日にちを教えてほしかった。出会った当初からの記憶を必死に掘り出していた俺をねぎらってくれませんか。


「記憶が飛んでいるのかな。颯太そうたの件といえばわかるかな。」


颯太の暴走から一日たったのか。でも当然か、外が明るいし。


「すみません。龍に食べられそうになった時に恐怖のあまりに気絶でもしたのか、それ以降の記憶が全くないのですよ。よければ詳しく教えてください。」


「龍に食べられそうになった。」

俺の発言が、どこか気になったようで。目を天井に向け考えるそぶりをする。


「それは後で聞くとして、説明するかな。」


考えることを放棄したなこの人。しかしこれで、麗化が謝った理由がわかるぞ。


「時間稼ぎするようにお願いしたこと覚えているかな。」


「はい。」


「あれから君から言われた通り、橋に溜まった水へ電流を流す準備を部下にさせていたのかな。」


われそうになった時以降の説明だけが来ると思っていたのだが。

もしかすると時系列に説明した方がわかりやすいのか。


「それで、電極の準備ができて後はこんな感じのボタンを押して電気を流すだけ、となった時に。」


両手の人差し指を立て、横130mm縦60mmぐらいの長方形をなぞりながら説明をする。おそらくボタンの大きさを説明しているのだろう。130と60、片手で持つにはちょうど良い大きさだ。


「はあ。」


「手が滑ってそのボタンを地面に落として意志と関係なく電気が流れたのかな。そして君諸共もろとも被害に。」


ばつの悪そうな顔をしながら説明する。おそらくボタンを落とした時が、俺が龍に食われそうだった時で、その意志と関係なく流れた電流で俺が助かったのだろう。そして、麗化は電流で俺と颯太が撃沈したところしか見ていないと。


「わかりました。でも、そのおかげで騒動が収まったのですよね。なので、謝る必要はありませんよ。」


命も救われたことだし。


「それならよかったかな。ところで龍に食べられそうになったとか言ってたこと教えてくれないかな。」


それ、説明しなくちゃいけないですか。


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