第八章の6
陽野 二式、恐ろしいことを思いつくものだ。
奴は能力で観察力が底上げされている。そして、学が言うには能力によって性格に多少影響が出るらしい。だが、ほんとうに多少なのか。
「麗化先輩。二式さんに刃物を渡していないですよね。」
「刃物を渡していないかな。」
時間稼ぎをするように頼んだが、凶器になるようなものは渡していない。水無は何を言っているのだ。
「ですが、あの振る舞いを見ていると。」
水無の目線を辿った先には、颯太と程よく間合いを取り、一つ隙があると距離を詰める二式がいた。
それはまるで刃物で殺しにかかるような動作。
「水無。二式はジャックナイフを持つ習慣はあったかな。」
「私の知る限りありません。」
手をポケットに入れているところから予想したのだが、違ったようだ。
「なら、ペン等は入れていたか。」
「そういった物も持ってなかったかと。」
ではなんだ。何を持っている。あれは確実に殺しにかかっている動きだ。
「先輩、本当に何も渡していませんよね。颯太は殺されませんよね。」
「わからない。」
能力を使った場合、何をしでかすかわかるはずがない。剛田 剛の件もある。予想なんか不可能だ。陽野 二式、お前は何を考えている。
「見てられません、私が能力で。」
わからない、という言葉にしびれを切らしたのか、水無は両手を前にした。
「水無、やめろ。おまえの能力は颯太と同じだろ。」
「放してください。じゃないと颯太が、颯太が。」
水無は、伸ばした両手を掴み能力の邪魔をした私を必死に振り払おうとする。
「お前まで暴走する気か。」
「でも、でも…」
「水無。暴走したリストと同じものを操るリストが同時に能力を使うと暴走していないリストも暴走する。お前も知っているはずだ。」
水無の手から力が抜け始めている。どうやら納得してくれたようだ。
「ここは見守るしかないかな。」
水無の表情は決して緩まない。当然のことではある。殺されかけているのが颯太であればなおさらだ。
逮捕協力はその騒動の止めるために、原因である能力者を殺害することも認められている。
だが、できる限り颯太を殺さずこの場を収めたい。それに元から殺す企みならあんな依頼をするはずがない。
「いったい何を企んでいるんだ。」




