第八章の1
「どれにしようかな?」
商店街のゲートをくぐって右側、手前から数えて3軒目、洋菓子店はそこにある。この洋菓子店はケーキを主に販売しているのだが、ケーキの他にもクッキーやらプリンやらが売られている。そんな中で気に食わないことがある。それは、店で一番売れているものがカステラであることだ。カステラの中でも抹茶が人気で、ご近所間へのお歳暮として購入されることが多いらしい。
洋菓子店で和菓子が堂々の1位へ名乗り出ているのはいかがなものか。しかも、そのことを店員は気にもかけていない。むしろショーケースの天板という一番目立つ場所にプラカードで「大人気」とか掲げて喜んでいるようである。
洋菓子店か和菓子店かわからない店で井端さんはショーケースに見入って離れない。話しかけようとすると思考の邪魔になるのか丁寧な口調で断られる。こうなると俺には手の打ちようがない。納得のいく決断を待つだけだ。
井端さんの意外な一面を見ての驚きや他の客への迷惑を考えての心配などが入り混じって何度も周囲を見回す俺に一本の電話がかかってきた。現状に落ち着かない俺にはその着信音が天の助けに思え、すぐに井端さんに一言伝えて、少し離れた場所で電話に出た。
「今どこにいる?」
麗化の声だ。声の感じからかなり切羽詰まっているようだ。
「近くの商店街です。どうかしましたか?」
「ちょうどいい、商店街で暴走しているリストがいる。場所は中通り。」
麗化は場所を伝えると一方的に通話を切った。
今日は何もせずのんびりしたいのだが、麗化の焦りがどうも気になるため行ってみよう。井端さんは一緒に来てもらった方が吉か。
ショーケースの前で悩んでいるところ悪いが無理やり連行して中通りを目指そう。




